こんにちは!こんばんは!今回も知っておきたい発達障害に関するノウハウや情報を提供させていただきます!本日は「発達障害にまつわる法律 」についてです。

発達障害のお子さんを育てる上でどうしても気になるのが、我が子が社会の中でどういう生き方をして、どんなサポートを受けられるのかというところでしょう。

発達障害児・者へのサポートは、自治体や国、民間団体が、近ごろ重要な課題として力を入れて取り組んでいます。実はこれらのサポートには、根拠となる法律があります。

少しとっつきにくい法律関連ですが、これを知っていると、発達障害児・者がどのように守られ、支援を受け、自分らしく生きていく助けになるのかがわかります。

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薄波
発達障害の子どもを育てるのと法律、なんの関係があるの?
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京本
知っていると支援を求めるとき役立ちますよ。一緒に見ていきましょう。
この記事でわかること

✓発達障害者の支援に関する法律にはどのようなものがあるか
✓法律では、発達障害者の支援の目的をどのように定めているか
✓法律では、具体的に発達障害者をどのように支援するよう定めているか
(教育・福祉・医療…)

発達障害に特化した法律は歴史が浅い!

実は、発達障害児・者を支援する法律ができたのは、2005年(改正・2016年)。意外にも、とても歴史が浅い法律なのです。

障害者の支援にまつわる法律はすでにいくつかありました。しかし、そこでの障害者の定義とは、

  • 身体障害
  • 知的障害
  • 精神障害

と、いわゆる障害者手帳が取得できる3障害に定められていたのです。

その中で、ADHDや自閉症、LD(学習障害)などの発達障害児・者は法律の網目をすり抜けて、支援を受けられない時代が長く続いていたのです。

そのため、コミュニケーションや仕事、学習の特定の分野で困難を抱えているにもかかわらず、知能検査ではその困り感は数字に現れず、支援を受ける基準を満たさないとみなされため、人知れず理解をされず苦しんでこられた方が大勢おられます。

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薄波
法からも周囲からも守られないと大変だったでしょうね。
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京本
そういった背景もあって、発達障害者のための法律ができたり、障害者全般についての法律が改正されたりしたんですよ。

では、具体的にどのような法律があるのかを見てみましょう。ここでは特に発達障害を持ったお子さんに関係のある法律の原文を紹介した上で、どういったことを定めた法律でかについて見ていきます。

発達障害児に関わる法律について

発達障害者支援法 (2016年改正)

<目的>

  • 発達障害者に「切れ目のない支援」を提供するため。
  • 障害の有無に関わらず尊重され、共に生きる社会を実現するため。

発達障害者支援法は2005年に定められましたが、2016年に改正されました。

この改正された箇所は、子どもの支援を受ける上でとても重要なポイントであり、これが法律に盛り込まれたことは、とても画期的だと言えるでしょう。この法律の重要なキーワードは「社会的障壁」、そして「切れ目のない支援」です。

社会的障壁

改正のポイントは、第1に、この法律では「社会的障壁」というキーワードを用いて、どのような層を「発達障害者」とするかを定義しているところです。

この法律において「発達障害者」とは、発達障害がある者であって発達障害及び社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受けるもの

発達障害者支援法(平成十六年十二月十日法律第百六十七号):文部科学省

「社会的障壁」の定義を、発達障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものとした

発達障害者支援法の一部を改正する法律の施行について:文部科学省 (mext.go.jp)

つまり、障害の軽重に関わらず、障害そのものによって生活に苦しんでいる人だけでなく、たとえ障害が軽くても、社会への適応が難しい、つまりこちらの環境調整や配慮のミスマッチなどによって、発達障害のしんどさを感じている人たちも、ここでは支援の対象にしましょう、ということがポイントです。

“発達障害者の支援は、社会的障壁の除去に資することを旨として、行われなければならない。“

発達障害者支援法 | e-Gov法令検索

このように、「生きづらい環境」が社会的障壁なのであれば、それを取り除くこと、つまり環境調整が、発達障害者の支援で大事にされるべきと書かれています。

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薄波
障害者本人に苦手なことがある事以上に、障害があって困るような社会の仕組みになっている事が問題、という立場ですね。
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京本
視力が悪ければメガネ、足が痛ければスロープ。発達障害者には何があるといいでしょうか?

切れ目のない支援

また、第2のポイントは、「支援の切れ目がないよう、人生を通じて支援が受けられること」です。このようにも記されています。

発達障害者の支援は、(中略)相互の緊密な連携の下に、その意思決定の支援に配慮しつつ、切れ目なく行われなければならない

発達障害者支援法 | e-Gov法令検索

発達障害者支援法では、切れ目のない支援として、「幼児期の障害の早期発見」「保育・教育」「就労」「地域の生活」と、ライフステージそれぞれについて、支援で務めるべきことが明記されています。

また、それぞれの支援がぶつ切りにならないように「情報の共有の促進」と言う項目も設けられています。

特に支援の初期について、国や地方公共団体(つまり公的機関)は、発達障害の症状が出てきたらなるべく早く発達支援に繋ぎ、その子の状態に応じた適切な支援をすること、その子を取り巻く関係者や保護者にも支援をすることが、役目として定められています。

また、なるべく支援の内容は、本人の意思を尊重した物であるべきとも記されています。

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小学校までは手厚く支援を受けていたのに、進学するにつれてサポートが急に薄くなって、学校嫌いになったり、卒業後の進路選択や就職で悩んだりする子も、これまでは多かったですね。
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京本
ライフステージに応じて変化する悩み事に応じて、支援者もサポートを変えていかなければいけませんね。

発達障害者も対象に含まれるその他の法律について

発達障害者支援法は、ADHD(注意欠陥多動性障害)、ASD(自閉症スペクトラム)、LD(学習障害)などの児・者を対象とした、発達障害に特化した法律でした。

このほかにも、障害者全般を網羅した法律があり、一部発達障害者にも関連する法律があるので、簡単に紹介します。

障害者自立支援法(2010)

<目的>

  • 障がいの種類(身・知・精)に関わらず、同じようにサービスを受けられるようにして、障害者が地域で安心して暮らせるノーマライゼーション社会を実現するため。
  • 障がいサービスについて、国と本人はそれぞれどの程度費用を負担するかを明確化するため(利用者負担)
  • 障がいサービスについて、障がいの程度によって何が利用可能かを明確化するため(障害者区分)

ここでは、「ノーマライゼーション」「利用者負担」「障害者区分」というキーワードが重要なポイントになっています。

ノーマライゼーション

ノーマライゼーションについては、関連動画で詳しく説明されていますので、こちらも見てみてください。

ノーマライゼーション

ノーマライゼーションとは、障害者でも一般の人と同じように生活できる社会をつくる、という考え方のことです。

利用者負担

実は発達障害を持つお子さんを育てていると関係が深いのがこの「利用者負担」です。放課後等デイサービスや児童発達支援事業に通っていると月々発生する費用は、実はこの法律がもとで決まっているのです。

国の費用負担の責任を強化(費用の2分の1を義務的に負担)し、利用者も利用したサービス量及び所得に応じて原則1割の費用を負担する

障害者福祉:障害者自立支援法のあらまし|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

これにより、療育も費用は1割負担で受けることができます。所得金額によっては負担額0円になることもあります。

障害者区分

こちらは、成人の障害者がサービスを受けるときに関係してきます。

その人の障害の程度から、どこまでが利用可能かが決定されるもので、将来、例えばお出かけの際に付き添いの人に移動を助けてほしいときの「移動支援」、自立した生活をしつつもサポートがある環境としての「グループホーム」などは、この障害者区分をみて、利用可能かどうかを確認することになります。

障害者基本法(2011)

<目的>

  • 障がい者の自立・社会参加の支援等について、国・地方公共団体等の役割を明らかにするため。
  • 障がいの有無によらず、差別なく平等に尊重される社会を実現するため。

この法律では、国や市町村が、障がいサービスを整える責任があると定めていますが、療育に関しても書かれている項目があります。

(療育)第十七条 

1 国及び地方公共団体は、障害者である子どもが可能な限りその身近な場所において療育その他これに関連する支援を受けられるよう必要な施策を講じなければならない。

2 国及び地方公共団体は、療育に関し、研究、開発及び普及の促進、専門的知識又は技能を有する職員の育成その他の環境の整備を促進しなければならない。

障害者基本法 | e-Gov法令検索

このように、子どもが利用しやすい場所に療育があるように環境づくりをすることは、行政の責任ですよ、と定めているのです。

また、療育に携わるスタッフが専門性を持ち、療育の質を高めていくことをサポートすることもまた、行政の役目とも定めています。

このほかにも、障害者基本法は、障がい者差別をなくし、障がい者への理解を深めるためとして、「障害者週間」(12月3日~12月9日)を定めたりもしています。

まとめ

この記事をまとめます。

この記事のまとめ

・発達障がいのサポートは、長い歴史の中では支援の対象に入らず、見落とされてしまう時代が長かったが
・最近になって法改正、制定があり、支援が少しずつ整ってきた
・発達障がい者の支援に特化した「発達障害者支援法」で、幼少期から成人まで切れ目のない支援を目指す
・障がい者のサポートについて定めた「障害者自立支援法」で、療育等の費用負担について触れられている
・障がい者の支援と平等を定めた「障害者基本法」で、療育について触れられている

なかなか法律を確認する機会は少ないですが、公的機関や社会が用意している支援サービスをフル活用するためにも、時々ニュースなどで動向をチェックしてみてもいいかもしれませんね!