こんにちは!こんばんは!今回も知っておきたい発達障害に関するノウハウや情報を提供させていただきます!本日は「後天性の発達障害」についてです。
発達障害はその定義から言っても「先天性」の障害ですが、インターネット上ではストレスや環境要因によって「後天性の発達障害」になる人もいるという意見も目にします。
これって発達障害?」
そんな風に、原因のわからない生きづらさに悩んでいませんか?
この記事で成長してから発達障害のような特性が現れる原因や「後天性の発達障害」について学んで行きましょう。
目次
後天的な要因で発達障害になる人もいる?
一般的に、発達障害の原因は生まれつき脳の機能に偏りがあるためだと言われています。
しかし発達障害の原因となる因子やメカニズムはまだはっきりと解明されていません。
そのため発達障害を引き起こす原因についての見解は専門家によって異なる場合が多く、「原因は先天的なものに限らず、後天的な要因によって引き起こされる場合もある」と考える医師や専門家もいます。
厚生労働省のホームページを確認してみました。
発達障害の定義
厚生労働省のホームページでは発達障害について以下のように記載があります。
発達障害は、生まれつきみられる脳の働き方の違いにより、幼児のうちから行動面や情緒面に特徴がある状態です。
引用:厚生労働省
このように、発達障害は「生まれつきのもの」であるという記載があります。
また「発達障害者支援法」では、「発達障害の症状が低年齢において発現するもの」と定義しています。
発達障害者支援法において、「発達障害」は「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」と定義されています。
引用:厚生労働省
養育環境は発達障害の原因になり得るのか
従来、発達障害は遺伝などの「先天的要因」がその原因となっていると考えられて来ましたが、近年は専門家の間で「先天的要因」だけではなく、虐待などの「後天的要因」も発達障害の発現に関係しているとの見方が増えて来ました。
生まれの発達障害、育ちの発達障害
▼こちらの動画は早稲田メンタルクリニック院長の益田裕介先生による「虐待と発達障害の関係について」の解説です。
(14:13から「生まれの凸凹、育ちの凸凹」というテーマに入ります)
・虐待と発達障害は因果関係がある。
・育った環境(虐待、過干渉、無関心、親の不仲、多忙すぎる親)によって落ち着きのない子が育つことはよくある。
・環境を整えることによって発達障害の問題が薄れていく場合がある。
養育環境が子の精神に与える影響は大きいですね。
親が発達障害で子に虐待するケース。
いずれにしても発達障害と虐待は深い繋がりがあるということですね。
過酷な家庭環境が発達障害に似た症状を来す原因になる
名駅さこうメンタルクリニック院長の丹羽亮平先生は、クリニックのブログで「虐待など過酷な環境での育ちと発達障害の関係」について下記のように分析しています。
『発達障害には遺伝との関連がある。(しかし直接的なものは見つかってない)
そして、外部要因の影響も大きい。
過酷な育ち(虐待など)では発達障害に似た症状を来たす。
過酷な育ち(虐待など)では発達障害の症状の悪化を来たす。』
つまりは、
『発達障害は遺伝との関連がある。一般的な養育環境において育て方において発達障害のリスクではない。』
引用:名駅さこうメンタルクリニック
・虐待など、過酷な環境で育つと発達障害に似た症状を来す場合がある。
・虐待など、過酷な環境で育つと発達障害が悪化する可能性がある。
・一般的な養育環境ならば発達障害の要因にはならない。
発達障害ではない人が「後天性の発達障害」になる可能性は?
虐待が発達障害のような症状を来す要因になると説明しましたが、まったく発達障害を持っていない人が虐待などの養育環境が原因で発達障害そのものを発症することはあるのでしょうか。
それはまだわかっていません。
名駅さこうメンタルクリニック院長の丹羽亮平先生は、クリニックのブログで「おそらくないのではないかと思う」と語っています。
しかし養育環境が発達に与える影響が大きいことは明確です。
詳しく見て行きましょう。
虐待が脳に与える影響
虐待の被害を受けて育った人たちの脳は、そうではない人の脳と比べて様々な違いが見られることが研究によって明らかになっています。
【暴言など言葉の虐待】
言語や人とのコミュニケーションに重要な役割を担う大脳皮質の側頭葉に位置する「聴覚野」の容積が増大する傾向がある。「聴覚野」は言葉の理解、会話能力など、言葉によるコミュニケーションに重要な部分。
【体罰による虐待】
激しい体罰を長期間受けると、脳の前頭前野の「右前頭前野内側部」という部分が萎縮する傾向がある。「右前頭前野内側部」は感情や思考をコントロールする部分。
さらに激しい体罰では「右前帯状回」も萎縮する。「右前帯状回」は集中力、意思決定、共感力に関わる部分。
【親のDVを目撃】
言葉によるDVや殴る蹴るなどのDVを子どもが長期間見た場合、視覚野の一部である「舌状回」が萎縮する傾向がある。「舌状回」は単語の認知に関係する部分。
参照:公益財団法人日本心理学会
「発達障害」と「愛着障害」は判別が難しいという問題点
虐待が脳に与える害は大きく、虐待の影響によって「発達障害のような症状」が出る場合があると言われています。
しかし、もともと発達障害が全くなかった子が虐待によって「発達障害のような症状」が出たとしても、生まれ持った脳の機能異常という「先天性の発達障害」ではなく虐待という「後天性の発達障害」であるとは言い切れないのです。
虐待の後遺症に「愛着障害」というものがあります。
虐待を受けた子どもはこの「愛着」がうまく育たないことが多いのですね。
この「愛着障害」が注意欠陥多動性障害(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)などの「発達障害」の症状とよく似ているため、専門家でも判別が難しいという問題があります。
▼愛着障害の特徴
【反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)】
・人に対する過度の警戒心。
・養育者に甘えたり泣きついたりすることがない。
・無表情で笑顔がない。
・他の人への興味関心が薄い。
【脱抑制型愛着障害】
・人に対して過度になれなれしい。
・知らない人に甘えたり抱き着く。
・落ち着きがない。
・乱暴
・虐待など過酷な養育環境が原因で落ち着きがないなど、発達障害のような症状を来す場合がある。
・まったく発達障害がない人が育った環境などが原因で「後天性の発達障害」になるかどうかは現時点ではわかっていない。
成長してから発達障害のような症状が出るのはなぜ?
自分は他の人と違うみたい…。
「自分は発達障害なのかもしれない」と悩んでいませんか?
発達障害といえば子どものイメージですが、「大人の発達障害」という言葉が社会に認知され始めている昨今、発達障害の診断を受けに精神科を訪れる大人が多いと言います。
ではなぜ大人になってから発達障害のような症状を自覚する人が多いのでしょうか。
「大人の発達障害」という言葉のイメージ
「大人の発達障害」という言葉のイメージで、「大人になってから発達障害になる人もいる」という認識が広がり、成長してから「後天的に」発達障害になったという認識を持っている人が一定数いる可能性があります。
「大人の発達障害」って「大人になってからなる発達障害」、つまり「後天性の発達障害」ということでしょうか?
「大人の発達障害」という言葉に明確な定義はありません。
大人になってから「後天的に」発達障害になった人、という意味なのかどうかは定かではありません。
子どもに関するイメージがある「発達障害」にあえて「大人の」と付けることで、仕事や生活面で生きづらさを感じている人がたくさんいることをイメージさせていると考えられます。
幼少期に症状が見逃されていた
成長してから発達障害のような症状を自覚し始めた原因として、子どもの頃に親や周囲の大人が発達障害のような症状に気付かなかった可能性があります。
▼発達障害のような症状を見逃していた理由としては以下のような可能性が挙げられます。
・ひと昔前は発達障害が社会に浸透していなかった。
・成長してより高度な社会性が必要になり困り感が出てきた。
ひと昔前は発達障害が社会に浸透していなかった
発達障害が社会全体に浸透するようになったのは最近の事です。
ひと昔前は発達障害という概念が薄く、落ち着きのない子やすぐ怒って手が出る子がいたら「問題児」と一括りにされてきました。
現代では「大人の発達障害」という言葉が社会現象になり、YouTubeやTwitterなどでもよく扱われるようになりました。
大人になってから発達障害を知り、自分の生きづらさに気付く人は多いのではないでしょうか。
1986年生まれの私も、小学生の頃を思い返すと、「あの子は発達障害だったのかなぁ。」と思う子が何人かいます。残した給食を机の中にしまって腐らせたり、すぐカッとなって手を出す子達です。
今の時代なら親や教師が発達障害を疑って診断を受けさせたり、その子の特性に合うよう指導するなど配慮があるでしょう。
成長してより高度な社会性が必要になり困り感が出てきた
子ども時代は特に問題なく過ごして来たけれど、義務教育が終了しスケジュールなど自己管理や他者とのコミュニケーション能力の重要さが高まった頃に困りごとが増えてくるケースは多いのではないでしょうか。
特に高校卒業以降は将来の見通しや計画、自己管理や他者との協力がとても大切になります。
子ども時代はどうにかなっていたことが上手くいかなくなり、「成長してから発達障害になった」と考える人は多いのかもしれません。
社会人になるとさらに高度な自己管理能力と社会的コミュニケーション能力が必要になるため、周囲に適応していくのが困難になり「大人の発達障害」を自覚する人が多くなると考えられます。
「後天性の発達障害」ではなく他の病気の可能性
「子どもの頃は普通だったのに、成長してから発達障害のような症状が出始めた。」と感じる人の中には、発達障害の症状に似た別の病気に罹患している人もいる可能性があります。
・うつ病
・躁うつ病
うつ病
発達障害の人に現れやすい「疲れやすさ」や「抑うつ状態」が似ています。
うつ病の症状には、「集中できない」「ミスをしやすい」というものがあり、これは注意欠陥多動性障害(ADHD)の特性に似ています。
躁うつ病
躁うつ病は活動が活発になる躁(そう)と気分の落ち込みや意欲の低下などが見られる鬱(うつ)を繰り返す精神的な病気です。
躁の状態のときは過活動になり、ハイテンションでしゃべり続けたり、衝動的に行動を起こしたりと注意欠陥多動性障害(ADHD)に似た症状が出ます。
まとめ
・もともと発達障害が全くなかった人が養育環境など後天的要因で「後天性の発達障害」になる可能性があるかどうかはまだわかっていない。
・虐待が子どもの脳に与える影響は絶大で、虐待が原因で「発達障害に似た症状」が出現する場合があるが、それが発達障害そのものなのか、発達障害に似た症状の別の病気なのかは判別が難しい。
発達障害は「先天性」の脳の機能異常だと言われていますが、その原因ははっきりわかっておらず、「後天性の発達障害」が存在するのかは今のところ不確かです。
しかし「大人の発達障害」という言葉が示す通り、仕事や生活面で生きづらさを抱えている大人は大勢います。
この記事が少しでも「発達障害のような症状」に悩む方のヒントになりますように。