こんにちは!こんばんは!今回も知っておきたい発達障害に関するノウハウや情報を提供させていただきます!本日は「目の動きに特徴あり?発達障害の見る力とトレーニング方法」についてです。

こんなお子さんの困りごとはありませんか。

・人や物にぶつかりやすい
・ノートをとるのが苦手
・音読の時に文字や行をとばしてしまうことがある

実は、これらには目の動きが関係している可能性もあります。
今回は、発達障害目の動きの関係やトレーニング方法を紹介していきたいと思います。

発達障害と目の動きには密接な関係があった!

なぜ発達障害があると、目の動きに特徴があらわれるのでしょうか。実は、いくつか目の動きと発達障害の特徴には、密接な関係があります。

目の動きが発達障害と密接に繋がっている例

学習障害と診断された、小学2年生の男の子壮太くん(仮名)を例に見てみましょう。

学習障害とは、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」といった学習に必要な基礎的な能力のうち、一つないし複数の特定の能力についてなかなか習得できなかったり、うまく発揮することができなかったりすることによって、学習上、様々な困難に直面している状態です。

文部科学省HPより

壮太くんは小学校へ入学したころから、ひらがなや漢字がうまく習得できずにいました。学校からの勧めで、小学校1年生の9月に病院を受診し、学習障害(読み書き障害)と診断をうけました。

壮太くんに音読のスピード検査を行ったところ、読み飛ばしや読み間違いが多く、読み方を覚えられていない漢字も多くあったといいます。このことから、壮太くんが文章を読むことに苦手意識を感じていることが分かりました。

続いて、壮太くんに目の動き具合に関する検査をやってもらったところ、動くものを目で追う検査では、対象のものをしっかり目で追い続けることができなかったといいます。また図形を模写する検査では、図形の角が取れてしまったり、線の交わりをうまく書くことができていませんでした。

これらのことから、学習障害のある壮太くんは対象物を目で追ったり、目で見た情報を体と連携しながら表現することが苦手だと分かったといいます。

ポイント

例で見たように、発達障害の特性と目の動きには密接な関係があり、目の動き方に難しさがあると、発達や勉強にも影響を与えうることがわかります。

発達障害の特性ごとに目の動きの特徴は違う?

発達障害ごとに目の動きに関する特性には違いがみられます。ただし、同じ発達障害を持っていても、ある特性は見られるけれどある特性は見られないということもあります。

発達障害ごとの目の動きの具体的な特性

ここでは、学習障害、注意欠陥多動性障害、自閉症の目の動きに関する特性を見てみたいと思います。

まずは、先ほども例に挙げた学習障害(LD)の目の動きについて、特徴を見てみます。
・図形をかくのが苦手
・漢字を覚えるのに時間がかかる
・数字の概念を理解するのに時間がかかる

次に、注意欠陥多動性障害(ADHD)の目の動きについて、特徴を見てみます。
・細かい部分に注意を払うことが苦手
・課題をスムーズに行うことが難しい

注意欠陥多動性障害(ADHD)とは、おおよそ、身の回りの特定のものに意識を集中させる脳の働きである注意力に様々な問題があり、又は衝動的で落ち着きのない行動により、生活上、様々な困難に直結している状態です。

文部科学省HPより

最後に、自閉症の目の動きについて、特徴を見てみます。
・人や物にぶつかることが多い
・躓いたり転んだりしやすい
・ノンバーバルコミュニケーション(アイコンタクトや身振りで伝えるなど)が苦手

自閉症とは、①他人との社会的関係の形成の困難さ、②言葉の発達の遅れ、③興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする発達の障害です。その特徴は、3歳くらいまでに現れることが多いですが、小学生年代まで問題が顕在しないこともあります。中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定されています。

文部科学省HPより

発達障害の特徴について詳しく知りたい方は、以下の記事ご覧ください。

発達障害の特性によって、目の動きに関する特徴は異なっています。
ただし、同じ発達障害を持っていても、特定の特性はみられないということもあります。
気になることがあれば、医療機関で相談しましょう。

発達障害の目の動きを良くするトレーニング方法って?

発達障害の目に関する困りごとを軽減する方法の一つとして、ビジョントレーニングがあります。ビジョントレーニングとは、見る能力を高める手法といえます。

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薄波
見る能力って、いったいどんなものがあるのでしょうか。
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京本
見る能力は主に3つあります。今回は、こちらに向かって走ってくる犬を見ている場合を例に考えてみましょう。
3つの見る能力

1眼球運動:走っている犬を目で追うときの目の動き
2視空間認知:犬が走る速さや到達地点を予測する
3目からの情報をもとに動く力:犬が走ってくる地点に行き、撫でられるように
しゃがむ

いかがでしょうか。見る能力といっても、対象物にピントを合わせてから、その大きさや距離を予測し、それらの情報をもとに体と連携して動くというステップがあります。

どれかワンステップでも苦手な部分があると、思うように体が動かなかったり、動作がゆっくりになってしまうことがあります。特に小学生頃までの他者とのかかわりや学習の基礎が育まれる時期に、見る能力が十分活用できないことは、学ぶ機会を失ってしまうことにもつながりかねません。

そのため、見る能力を高められるビジョントレーニングを日々の習慣として取り入れていくことをおすすめします。

何種類かある!ビジョントレーニング

ビジョントレーニングにはいくつもの種類があります。その中でも代表的なものを紹介します。

①追従性眼球運動

このトレーニングは、移動している対象物から目を離さずに、その大きさや位置を予測する力を鍛えることができます。線を目でなぞったり、動く雲を眺めるといった方法があります。

効果の例:文を読み飛ばすことが減る
     図形を理解しやすくなる

②跳躍性眼球運動

このトレーニングは、ある点から違う点へと目を素早く動かす力を鍛えるトレーニングです。ばらばらに並んだ数字の図を見て、1から順番に数字を見つけていくといった方法があります。

効果の例:黒板を写すのが速くなる
     人込みから人を見つけるのが速くなる

③眼と体のチームワークトレーニング

このトレーニングは、目からの情報をもとに動く力を鍛えるトレーニングです。お手本の動作を見ながら、体を動かすといった方法があります。

効果の例:手先を使った作業がスムーズになる
     ダンスや運動などの動きがスムーズになる

Youtubeには、手軽にできるビジョントレーニングの動画がたくさんあります。ぜひおうち時間を活用して取り組んでみましょう。
動画の一例として、 跳躍性眼球運動のものを紹介します。

まとめ

今回は、発達障害と目の動きの関係とそのトレーニング方法について紹介しました。いかがだったでしょうか。

今回紹介したのはこちらの内容でした。
・発達障害と目の動きの密接な関係
・発達障害ごとの目の動きの特徴
・目の動きを良くするトレーニング方法

発達障害の見る力を高めるためには、ビジョントレーニングが有効な手段の一つになります。Youtubeなどでも気軽にトレーニングできる動画がたくさんありますので、ご自宅でもぜひ挑戦してみてください。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

参考文献:

三浦光哉, 小島彩菜. 学習障害児への認知プロフィール分析を活かした読み書き指導とビジョントレーニングの効果. 宮城教育大学特別支援教育総合研究センター研究紀要. 2013, vol. 8, p. 1-13.