こんにちは!こんばんは!今回も知っておきたい発達障害に関するノウハウや情報を提供させていただきます!今回はアニマルセラピーに関してです。
最近のホルモンの研究により、動物との触れ合いがなぜ人間に癒しを与えてくれるのかが明らかになってきています。
今回はその癒し効果が発達障害の子にどのようによい影響を与えるのかを見ていくと同時に、日本初のセラピードッグとファシリティドッグの感動の物語についてもお伝えします。
この記事を読めば、ドッグセラピーに疑念や不安な気持ちを持つかたも、その思いは払拭されるはずです!
目次
動物と触れ合うと「幸せホルモン」や「脳内麻薬」が分泌される
ここでは発達障害の子にとって、これらのホルモンが分泌されることにより、どのような効果が期待できるのか詳しく見ていきたいと思います。
オキシトシン
オキシトシンは、「幸せホルモン」・「癒しホルモン」・「愛情ホルモン」ともいわれ、人間に幸福感を与えるホルモンです。
たとえば、お母さんは赤ちゃんと見つめ合うと、とても幸せな気持ちになりますよね。
この時脳で分泌されているのがオキシトシンです。
このオキシトシンは、犬と見つめ合ったり、触れ合うことでも分泌されます。
ですが、このときオキシトシンが分泌されるのは人間に限ったことではありません。
人間と触れ合うことにより、犬にもオキシトシンが分泌されているのです。
この研究は、麻布大学によりアメリカの科学雑誌「サイエンス」にて発表されています。
その後、ユニ・チャーム株式会社が高齢者施設でペットセラピー前後のオキシトシン分泌量を測定する実験を行いました。
その結果、ペットセラピーを実施した高齢者のうち83.8%が、オキシトシンが増加していることが実証されました。
そしてセラピーをおこなった犬のうち77.1%にも、オキシトシンの増加が確認されました。
犬にとっても人間との触れ合いは幸せを感じるうれしい時間なのですね。
そんな無条件の愛を与えてくれる犬と触れ合うからこそ、ASDの子も心を開くことができるのかもしれません。
「ストレスホルモン」のコルチゾールを減少させる
コルチゾールはストレスを感じた時に身体を守ろうとして大量に分泌されるホルモンです。
ペットとの触れ合うことによりこの「ストレスホルモン」ともいわれるコルチゾールを減少させることができます。
そのため、発達障害の子のイライラやストレスを軽減してくれる効果も期待できます。
見るだけでもペットは癒しを与えてくれて、ストレスを軽減させてくれるのは間違いありません。
もう一つの「幸せホルモン」であるセロトニンの分泌を促す
それだけではなく、犬との触れ合いは、もう一つの「幸せホルモン」といわれるセロトニンの分泌も促してくれます。
理化学研究所脳科学総合研究センターの最近のマウスを用いた研究により、ASDの人たちにはこのセロトニンが不足しているということが明らかになりました。
そして、このマウスの脳内セロトニン量を回復させていったところ、社会性行動異常の症状を改善するという研究結果が発表されました。
ですが、日本脳科学関連学会連合のサイトでは、ASDの要因はセロトニン不足の他にもいろいろな要因が考えられるという指摘をしています。
そして、このセロトニンは抗うつ剤に多く含まれますが、発達期の子どもに摂取させることは副作用のリスクが考えられるため、薬から摂取することは難しいという指摘もしています。
それでも、症状を緩和できることが期待できるのならば、体内で自らセロトニンを増やせるように心がけたいですよね。
“幸せホルモン”セロトニンで心も体もスッキリ目覚める!では、セロトニン研究の第一人者である脳生理学者の有田先生がセロトニンの活性方法を伝えています。
1.1日10~30分日光を浴びる
2.1日5~30分の運動
3.スキンシップ
1.大脳に働きかけて覚醒の状態を調整する
2.心の領域に働きかけて意欲を促す
3.自律神経のバランスを整える
4.姿勢筋への働きかけ
5.痛みのコントロール
確かに太陽の光を浴びると、「よし、やるぞ!」という気力がわいてきますよね。
そして、ストレスは自律神経の乱れも引き起こし、やる気のなさやだるさ、不安感、夜眠れないなどのいろいろな不調を引き起こします。
「脳内モルヒネ」ともいわれる痛みを抑えるホルモン・エンドルフィンの分泌を促す
エンドルフィンは「脳内モルヒネ」・「脳内麻薬」ともいわれ、痛みを抑えたり、幸福感を与えたる働きをする脳内ホルモンです。
エンドルフィン(endorphins)の名前の由来は、身体の内部という意味である“endogenous”と、ガン治療で鎮痛剤として使用される “morphine” (モルヒネ) の組み合わせから成ります。
つまり、エンドルフィンは脳内で作られるモルヒネという意味ですね。
エンドルフィンは人間の脳内にあるオピオイド受容体に結合し鎮痛作用や幸福感をもたらします。
オピオイド受容体は英語で opiate receptors と書き、opiate にはアヘン剤という意味もあります。
つまり、アヘンが結合する受容体という意味ですね。
モルヒネは幸福感をもたらす麻薬として有名なアヘンから精製されます。
エンドルフィンは人間が老衰で死ぬときにも体内で多く分泌され、これにより人は痛みなくまた幸せな気持ちで死を迎えることができるそうです。
エンドルフィンの鎮痛効果は、なんとモルヒネの80倍もあるそうです。
このエンドルフィンは運動中にも放出されます。
マラソンやサイクリングをしているときは、途中で疲れても、皆さん頑張りますよね。
それは、運動をすれば体に良いというのもありますが、頑張ったときに感じる爽やかな高揚感を得たいというのもあるのではないでしょうか。
このとき脳内で分泌されているのがエンドルフィンです。
そして、このときの高揚感をランナーズハイといいます。
セラピー犬のすごさを実感していただける実話のご紹介
そしてその理解をもって、日本初のセラピードッグとファシリティドッグの実話を知ると、また違った角度からセラピー犬のすごさを実感していただけるのはないでしょうか。
日本初のセラピードッグは虐待を受けゴミ箱に捨てられた殺処分寸前の犬だった
セラピードッグについて語るにあたり、どうしても知っておいて欲しいのが、日本初のセラピードッグである名犬チロリの活躍です。
チロリはセラピードッグといって想像しがちな血統書つきの犬ではありません。
雑種で、虐待を受けゴミ箱に捨てられていた犬でした。
名犬チロリの活躍とそのすごさは、以前フジテレビのTV番組「奇跡体験!アンビリバボー」で放送されました。
番組の内容を下記の動画でご覧いただけますので、ぜひご覧ください。
チロリからたくさんの愛情と希望をもらって、ここまできました。
チロリの活躍があったからこそ、いま、後輩の犬たちが立派に活動できるようになったのです。
チロリ、ありがとう。
ほんとうに、ありがとう。
「名犬チロリ」 大木トオル著 岩崎書店 より
どんな犬でも人間が愛情を持って育てれば、予期せぬかたちで素晴らしいものを返してくれます。
ASDの子の思いやりの心を育てるきっかけに
ASDの子が苦手な点としてよくあげられるのが、人の気持ちを推測することです。
人の気持ちを推測できないため、思いやることも不得意です。
また、積極的に皆の輪へ参加しようとせず一人でいることを好む傾向があります。
何を言っても無反応で目を合わせることもあまりしません。
成長するにつれて、症状が少しは改善することもあるかもしれません。
ですが、この特徴のため、大人になり社会で苦労することは多いはずです。
ですが、ASDの子でも殺処分寸前から救われセラピードックとなった犬たちと触れ合えば、思いやりの心を育てることができるのではないでしょうか。
そのため、療育施設にこそ、大木さんが運営する一般財団法人国際セラピードッグ協会の犬たちを取り入れて欲しいと個人的に強く思います。
動物は人間のような複雑な感情を要求しない
一般財団法人国際セラピードッグ協会代表の大木さんは子どもの頃、重度の吃音障害のため、上手に話すことができなかったそうです。
そのため、いじめにあい、人と話すことが怖くなってしまったそうです。
そして、そんな傷ついた心を癒してくれたのが、そのときの愛犬でした。
言葉が発せなくても犬はそんなことは気にせずに、変わらずに愛情を注いでくれる。
傷ついた心を癒してくれる愛犬のおかげで大木さんは障害を克服していくことができたそうです。
犬との交流において、ASDのお子さんが苦手とする会話は必要ありません。
たとえASDのお子さんが犬に気づかなかったとしても、犬は何度でも無邪気に接してきます。
そして触れ合えば確かな癒しと楽しい時間を与えてくれます。
犬の無条件の愛とシンプルな意思疎通がASDの子にとってうまく作用し、その成功体験が人間との交流への橋渡しをしてくれることも期待できます。
噛んだりして危害を加えるのではないかという不安
セラピードッグに関して、犬が突然の出来事に狼狽して、人間を噛んだりするのではないかという不安の声もあります。
しかし、きちんと訓練されている犬で人間に危害を加えることはほぼ考えられません。
チロリは、セラピー中にお年寄りの方に、わき腹をつねられても必死に耐えたそうです。
一般財団法人国際セラピードッグ協会では、セラピードッグになるために45教科の項目をクリアしなければなりません。
アイコンタクト:患者さんと見つめ合う
ハウスマナー:家の中で人間と生活するときの基本マナー
ウォーキングマナー:人間のさまざまな歩行速度に合わせて歩く
ラインマナー:複数の犬が一列に並んで歩くトレーニング
ケインウォーク:杖をついて歩く方の速度に合わせて歩く
車イスとの同足歩行:車イスの左側を同足歩行する
ハプニングマナー:突然の出来事に冷静に対応する
ベッドマナー:部屋での行動マナーとベット上での基本マナー
ハンディキャップマナー:障害者に接するマナー
名犬チロリを読めば、セラピードッグが人間に起こす奇跡を知ることができます。
また、不登校で引きこもりになってしまった中学生の子が犬と触れ合うことにより、やる気を取り戻したお話しもあります。
すべて実話ですので、チロリに関してだけでなく、セラピードッグに関しても知ることができる良本です。
セラピードッグに関して知りたい方や不安のある方は、ぜひ「名犬チロリ」を読んでいただければと思います。
重病の子どもたちを支える日本初のファシリティドッグ
ファシリティドッグは、病院に常勤し、重い病気と戦う子どもたちを支える犬です。
日本初のファシリティドッグであるベイリーは、2010年に静岡県立こども病院のご理解により、導入させていただくことができました。
現在では、静岡県立こども病院に「ヨギ」が、神奈川県立こども医療センターに「アニー」が、そして東京都立小児総合医療センターに「アイビー」が常勤しています。
日本初のファシリティドッグ・ベイリーのストーリー
日本初のファシリティドッグのベイリーは、神奈川県立こども医療センターで9年間セラピー犬として活動してきました。
そのベイリーが高齢のため引退する前に、最後の任務として支えたのが、小腸に重い病気を抱える10歳のゆいちゃんの大手術です。
ゆいちゃんは小さな頃から入退院を繰り返し、生死の境をさまようこともあったそうです。
そんなゆいちゃんにベイリーは6年間寄り添ってきました。
今回の大手術が成功すれば、ゆいちゃんの病気は根本的に改善されます。
手術前日。
「ベイリーがきてくれて緊張が少しほぐれた。ベイリーをさわっていると落ち着く。明日は手術。少し緊張しているけれど頑張る。」
ゆいちゃんの日記より
手術の日。
不安そうなゆいちゃんのもとに、ベイリーが駆けつけると、ゆいちゃんは笑顔になり、手術室へとベイリーのリードを持って歩き出しました。
手術は無事成功しましたが、しばらくは刺すような痛みが続くため、眠れないでいたゆいちゃん。
そこにベイリーがやってきて、ゆいちゃんのベットで添い寝をしました。
そのまま30分たってもベイリーはベットから動こうとしません。
そしてゆいちゃんが眠りにつくと、ベイリーは安心したようにベットから離れたのでした。
手術から5日後。
ゆいちゃんは腸が回復するまで点滴をし、水を飲むこともできません。
早く腸を回復させるためには、少しでも体を動かし、腸を刺激しなくてはなりません。
しかしゆいちゃんは痛みのため、移動はすべて車いすに頼っていました。
そこで、ベイリーと歩くように促すと、ゆいちゃんはおそるおそる立ち上がり、ベイリーのあとをゆっくりと歩き始めたのでした。
「ベイリーと一緒にナースステーションの周りを1周した。とても痛かったけど、ベイリーが一緒にいるから頑張れた。ベイリーありがとう。」
ゆいちゃんの日記より
退院から2か月後。
高齢のベイリーは引退を迎えました。
「ベイリーがそばにいてくれると、入院中のつらいことも忘れさせてくれました。おつかれさま、ベイリー。ありがとう、ベイリー。これからはゆっくり休んでね。」
ゆいちゃん
ゆちゃんの夏休みの宿題の自由研究のテーマは”病院で働く犬”。
ベイリーのすごさを学校の仲間にも伝えたいとゆいちゃんは言いいます。
「ベイリーとか、頑張っている子たちは、すごいんだよって。」
ゆいちゃん
ベイリーありがとう
ベイリーは、2020年10月1日に横浜の自宅にて安らかに息を引き取りました。
12歳9か月でした。
下記の動画は、そんなベイリーへの感謝の気持ちを込めて作成された動画です。
日本初のファシリティドッグとして、前例のない中で、導入には不安の声も多くありました。
でも、その不安をすぐに打ち消し、代わりに笑顔と安らぎをまわりに届けたベイリー。
この動画を見ると、とても多くの方たちがベイリーに支えられ、そして感謝しているということがわかります。
ベイリーは患者さんの自ら治ろうとする気力を後押ししてくれる存在でした。痛い注射も、苦しいリハビリも、ベイリーが一緒にいるから頑張ってくれました。病は気からといいますが、自ら治ろうとする力が非常に大事です。その力をベイリーは与えてくれていました。
神奈川県立こども医療センターの総長 町田先生
ただかわいいというのではなく、意思を持ってこちらを見つめてくるのがとても印象的で、とてもオーラを放っていた犬でした。愛らしい姿としっかりお仕事をする姿勢、みんなを包み込むやさしさ、全部わかってるよというような視線を会う人みんな感じると思います。なので、みながベイリーを応援し、活動が広がってきたと思います。これからもベイリーが残してくれた功績を私がたちがしっかりと引き継いでいくので、ベイリー応援していてね、という気持ちです。
シャイン・オン!キッズ ベイリーの後輩犬ヨギのハンドラー 鈴木恵子さん
セラピードッグの運営は寄付金によって成り立っている
セラピードッグやファシリティドッグは、素晴らしい効果があるにも関わらず日本ではまだあまり広まっていません。
そして、その運営の多くは寄付金によって成り立っているという現状もあり、非常に不安定な立場にいます。
セラピードッグ・チロリの一般財団法人国際セラピードッグ協会では、捨て犬や福島での被災犬を救助し、セラピードッグへの育成を行っています。
また、犬たちが引退した後も、最後まで看取りを行っています。
その他にも、被災犬たちを救助するため「福島・いわき被災犬緊急保護センター」の運営を国から引き継ぎました。
これらの活動を維持していくことや、高齢犬への医療費などにより、多くの出費がかかります。
ですが現在は、コロナウイルスのため、すべての活動を休止することを余儀なくされており、大きなダメージを受けています。
今後も、一般財団法人国際セラピードッグ協会の素晴らしい活動を支えるために、皆さまの温かいご支援をいただけましたら幸いです。
ご支援・ご協力のお願い:一般財団法人国際セラピードッグ協会
ファシリティドッグ・ベイリーのNPO法人シャイン・オン!キッズでは、引き続きベイリーの後輩犬を育てるために活動を行っています。
しかしこちらもやはり、コロナウィルスの影響により活動資金の不足に陥っています。
今後も、ファシリティドッグを必要としている子どもたちに、笑顔を届けていくために、どうぞご支援のほどお願いいたします。
ご支援・ご協力のお願い:NPO法人シャイン・オン!キッズ
それまでに、この素晴らしい取り組みが日本からなくなってしまうことのないよう、皆様の温かいご支援をいただけましたら幸いです。
まとめ
やっぱり、犬は人間と触れ合うことにより喜びを感じる生き物なのですね!
このような研究がさらに進み、発達障害に有効な治療薬が出てくることを期待します。
そして同時に、アニマルセラピーに保険が適用されていくことを願っております。