こんにちは!こんばんは!今回も知っておきたい発達障害に関するノウハウや情報を提供させていただきます!
本日は「発達障害と視覚優位」についてです。
視覚優位は発達障害のうち自閉スペクトラム症の方に併発しやすいといわれています。
今回は視覚優位と発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)について関係性と対処法を解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
視覚優位と発達障害の関係性
結論からいうと、ASD(自閉スペクトラム症)の方は視覚優位になりやすい傾向があります。
視覚優位は「目で見た情報から物事を理解するのが得意」そして耳から聞こえる言葉だけで何かを理解するのが苦手な傾向をいいます。
発達障害のうちASD(自閉スペクトラム症)の特性を持つ方は、耳から入る関心の低い内容に興味を示しません。
より関心の高い方へ感覚(視覚)を研ぎ澄ませるため、結果的に視覚優位に見えるのです。
これらをまとめて認知特性といわれています。
【認知特性】
認知特性とは人が生活する上で感じる五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)を脳で情報化する能力。
- 視覚優位:目から入る情報が優位
- 聴覚優位:耳から入る情報が優位
- 触覚(身体感覚)優位:体に触れた情報が優位
多くの人は五感をバランスよく活用しながら生活していきます。
ですが視覚優位が強く出るとアンバランスな状態になり、日常生活に支障をきたすかもしれません。
自閉症スペクトラムのその他の特徴については、別記事でまとめています。参考にしてください。
参考動画:【視覚優位】当事者の解説
実際に視覚優位である方の解説で、動画の中であなたが視覚優位かどうかチェックできます。
ただし動画は素人判断のため参考程度に留めてください。
視覚優位の人の特徴
ここで視覚優位の人の特徴を見ていきましょう。
得意なこと
- 人の顔を覚えるのが得意
- 絵、写真、グラフ、動画など視覚的に示された物を理解しやすい
- ざっと見ただけで、全体の関係性を理解できる
- 頭のなかで、言語ではなく映像を使って思考する(映像思考)
- 空間認知が得意、何かを図で認知するのが得意
苦手なこと
- 漢字を部首で覚える、漢字を似た字と間違えて書いてしまう
- 言葉で伝えるのが苦手
- 言葉で説明されても理解が追い付かない
どうでしょうか?お子さんやご自身に当てはまるところはありましたか?
視覚優位への具体的な支援方法
次に視覚優位の人に対する具体的な支援方法を解説します。
環境を整えよう
お子さんが先生や親のいうことを聞いていないように見えるのは、聴覚からの情報処理がうまくできないから、理解しにくいからかもしれません。
視覚優位のお子さんにおすすめの支援方法として「説明を絵で表現」「注意して欲しい点をメモにリストアップして渡す」などがあります。
また視覚優位であるがために、視覚から得られる情報が多いと混乱してしまい集中力低下につながる場合もあります。
例えばテレビやラジオを付けっぱなし、気になる雑誌が開きっぱなしなどです。
集中力を要する作業をする場合は、不要なものが視界に入らないように部屋を片付け、刺激物から遠ざけましょう。
上記の内容は一般的な方法です。これから挙げる具体例は「苦手なこと」で挙げた、
- 「言葉で伝えるのが苦手」
- 「漢字を部首で覚える、漢字を似た字と間違えて書いてしまう」
に有効な手段です。参考にしてみてくださいね。
絵カード交換式コミュニケーション・システム(PECS)
PECSはデラウェア自閉症プログラムで開発された、コミュニケーショントレーニング手順です。
絵カードを使って、相手の要求を理解したり、自分の要求を伝えるトレーニングができます。
PECSの特徴は前提となるスキルが必要ないことと、初めから自発的なコミュニケーションをとるトレーニングができることです。
PECSには以下の6つのフェーズがあります。
伝えたいことは、絵カードを手渡しするんだということを教えます。
目の前にある絵カードを近くの人に渡す練習します。
フェーズ1の応用です。絵カードや、手渡しする人を遠くに配置し、何か伝えたいことがある時には、遠くの絵カードを取りに行き、伝えたい人のところまで移動して、手渡すという練習します。
複数のカードから自分の欲しいものを選んで、相手に手渡しする練習します。要求は、絵カードを使って知らせるんだということを学びます。
単に「単語」で要求を伝えるのではなく、「文」で伝える練習します。
例えばパンが欲しいときは「パン」と「ください」という二枚のカードを使います。二枚のカードは文カードという横長のカードに貼って渡します。
またフェーズ4では、「甘い」や「しょっぱい」など、ものを形容するカードも使うという練習します。
「何が欲しい?」という質問に、絵カードの中から適切なものを選んで手渡すという練習します。
例えば、緑のノートが欲しい場合、「緑色を指すカード」「ノートの絵カード」「ください」というカードの3枚を文カードに貼って手渡せるようにします。
「何が見える?」などの質問に対して答えるという練習します。必要な絵カードは対象物の描かれた絵カードと、「見える」とか書かれたカードです。
例えば花が見える時には「花」と「見える」というカードを文カードに貼りつけます。
何かを伝えたいときに絵カードを使って伝えるという練習するため、自発性を養えます。
参考元:PECS®(絵カード交換式コミュニケーションシステム)
コミュニケーションは「伝わるもしくは伝える」が一番大切であり、PECSは役に立つ可能性が高いといえます。
下の動画では実際に絵カードを使ってやり取りをしている姿を確認できます。
「本格的に絵カードについて学んでみたい!」といった場合は、以下の参考書を確認してみてはいかがでしょうか。
「言葉」を用いたコミュニケーションが苦手な自閉症のある子どもへのPECSを使った接し方について解説している本です。
・少しプロ向け?成長過程で振り返りでみるには参考になる
・障害をもつ人のコミュニケーション支援に関心のある方は必読
・少し情報が古いところがある
参考元:Amazonレビューページ
参考価格:2,200円(税込)※記事投稿時の価格(変動する可能性があります)
文字の読みにくさを解消するUDフォント
視覚優位の人は文字の読みにくさを感じているため、漢字を似た字と間違える場合があります。
漢字を間違えないようにするに有効なのが文字のフォントを変える点です。
視覚優位の人は明朝体よりゴシック体のほうが読みやすいといわれています。
そして読みやすい字体を追求したのが、UDフォント(ユニバーサル・デザインフォント)です。
このフォントは遠くからでも判別しやすく、普通の人にも読みやすいことからさまざまジャンルで使われています。
各会社から多種多様なUDフォントが販売され、一部無料のフォントもあります。
マイクロソフトWordの「メイリオ」というフォントは、UDフォントを意識して作られているため使い勝手が良くおすすめです。
UDフォントをいくつかご紹介します。
有料のUDフォント
無料のUDフォント
上記フォントを利用して、ぜひ「読みにくさ」を解消していただければと思います。
その他の工夫
上記で紹介した以外にも、さまざまな工夫を集めました。
すべては実行できなくても、一つでもできれば素晴らしいですね。
- 指示は「メモを取る」
- 勉強はYouTubeの動画教材やオーディオブックなどの音声教材を活用する
- その日に行動しなければならないことはすべて項目として書き出しておく
- スマートフォンなどの動画録画機能を使って、覚えておかなくてはならないことを映像に残しておく
ASD(自閉スペクトラム症)の特徴を知ろう
コミュニケーションは「相手の言っていることを理解する」と「自分の発したことを理解してもらう」の双方向から成り立っています。
上記双方向のやり取りが自閉症特性によって制限されているというのが、「視覚優位」の状態です。
「全体よりも部分の認知に強い」「聴覚情報処理よりも視覚情報処理が強い」をいいます。
ASD(自閉スペクトラム症)の人はある場面の「意味」と「見通し」への理解が不得意です。
ですからコミュニケーションの際に「この場面の〈意味〉と〈見通し〉はこういう風に理解してほしい」と伝えるために視覚的支援はとても有効といえるでしょう。
またコミュニケーションのもう一方の側面、ASD(自閉スペクトラム症)の人が「自発的に自分の思いを伝える」時も、視覚的支援は役に立ちます。
WISC-Ⅳで視覚優位を診断
「簡易的なテストよりもちゃんとした検査を受けたい」と希望する方はいませんか?
視覚優位かどうかを調べるための検査として、WISC-Ⅳを用いる場合があります。
WISC-Ⅳとは
WISC-Ⅳ(ウィクス4)は5歳~16歳11ヶ月の児童を対象にした知能検査で、4つの分野があります。
- 言語理解(Verbal Comprehension Index: VCI)
- 知覚推理(Perceptual Reasoning Index: PRI)
- ワーキングメモリ(Working Memory Index: WMI)
- 処理速度(Processing Speed Index: PSI)
言語理解
言語の理解力や表現力、言語による推理力や思考力、語彙力など言葉にまつわる知能を検査します。
例えば「りんごとみかん」と伝え「果物」と連想できるかどうかを確認します。
知覚推理
空間認知や目で見たものを理解して表現する知能を検査します。
例えば複数のイラストからカテゴリが同じイラストを選ぶ、積み木を使って何かを表現するなどです。
ワーキングメモリ
注意力や集中力、複数の情報を同時に処理できるか、順序立てて処理できるかどうかを調べる知能検査です。
例えば算数の文章題、口頭で数字を挙げて並べたり復唱してもらいます。
処理速度
どれだけ素早く物事を処理できるかどうか確認する知能検査です。
例えば口頭で指示された記号や数字を書き写すなどがあります。
診断方法
4つの群を計測した結果、全IQと、言語性IQ(VIQ)と動作性IQ(PIQ)を算出します。
かつて視覚優位の人はVIQ<PIQだと報告されていました。
動作性IQ(PIQ)は「目で見たものを手や道具で表現する能力」ですよね。
そして言動性IQ(VIQ)をはかる出題は、基本的に「口頭で質問し、口頭で答える」形式です。
一方動作性IQ(PIQ)を測る問題は、「口頭での説明と共に必ず検査材料が提示され、目の前の材料を手掛かりに答える」という形式になっています。
したがってVIQ<PIQの乖離が大きければ(15以上)、視覚優位と疑われます。
自閉スペクトラム症の人にも視覚的支援が必要?
ASD(自閉スペクトラム症)の人は、VIQ>PIQの方も多い傾向にあります。
それならば、言語(聴覚)によるコミュニケーションが得意という結論を導き出せるはずです。
しかし実際は自閉スペクトラム症の人にも、コミュニケーションの際に視覚的支援が有効だということがわかっています。
すなわち視覚優位というのは検査結果でわかるものではなく、あくまで「視覚的支援が有効」という現場からの経験から導き出されたものです。
それを指して「視覚優位」という言葉を当てはめてきたというのが妥当でしょう。
当記事でも便宜的に「視覚優位」という言葉を使っていますが、それは「視覚的支援が有効」という意味で使っていると考えてください。
参考元:精神科治療学
行動や興味が限定的かつ反復しやすく、人間関係やコミュニケーションを困難とする障害です。
参考元: e-ヘルスネット(厚生労働省)
まとめ
発達障害と視覚優位についてお伝えしてきました。
- 視覚優位とは目で見た情報から物事を理解するのが得意なこと
- 反対に耳から聞こえる言葉だけで何かを理解するのが苦手
- 視覚優位は自閉症スペクトラム障害によくみられる特徴
- 簡易的なチェックや検査でも視覚優位か判断できる可能性がある
- 視覚優位の子どもには絵カードやフォントを活用して支援する
特性によって不自由することもあると思いますが、生きていくのに必要なことが出来さえすれば手段はいくらでもあります。
お子さんやご自分の特性を理解して特性に合わせた工夫を実行すれば生活をしやすくなります。
この記事がその一助になれば幸いです。