こんにちは!こんばんは!今回も知っておきたい発達障害に関するノウハウや情報を提供させていただきます!本日は「発達障害かどうかを調べるための検査内容」についてです。
保育所や学校から、発達の特性を指摘された時、「検査を受けてみてはどうですか?」と勧められ、びっくりしたという経験を持つ方もおられるのではないでしょうか?
検査と一口に言っても、どのような内容なのか、何が分かるのか、検査を受けるメリットとデメリット等を事前に知っておけると安心ですよね。
発達障害について知るための検査について、知りたいという方は、是非この先を読み進めていってくださいね。
目次
発達障害の特性を知るための検査内容とは?
発達障害の診断は、診断の基準(「DSMー5」や「ICDー10」など)に基づき、生まれてからのお子さんの発達の様子も含めて確認した上で、なされるものです。
そのため、検査のみで診断が確定するということはありませんが、一つの検討材料になったり、検査結果から見えてくるお子さんならではの困り感が明らかにはなります。
それにより支援方法や、より良い療育プランを作っていくことに繋げることができます。
いろいろな種類があるので、順に見ていきましょう。
- 知能検査
言葉の力、認知能力など、いわゆるIQがわかります。
- 発達検査
今の状態は、何歳相当の発達段階にあるかがわかります。
- 社会生活能力
発達障害のお子さんは、社会性や身辺自立、感情コントロールの面で困難さを抱えることが多くあります。そのため、生活面の発達についても調べることがあります。多くは自記式です。
- スクリーニングテスト
カットオフポイントという一定の基準が決まっており、発達障害の傾向にどの程度当てはまるかがわかります。
- 脳波検査
中には、てんかんなど、脳波の異常によって、知的発達の障害が起こっているケースもあります。医師から勧められ、脳波を確認する場合もあります。
※二次障害としての行動が気になる場合、民間のカウンセリング機関等であれば、性格検査を組み合わせることもあります。また、服薬を検討する場合は、採血による血液検査がされることもあります。
発達障害の二次障害、服薬治療については以前にもこれらの記事で紹介しています。
知能検査にはどのようなものがある?
心理検査全般に言えることですが、具体的な問題を公表することは禁止されています。ですので、ざっくりとどういうことがわかるのかについてのみ、紹介したいと思います。
まずは、知能検査から紹介します。
WISC−Ⅳ
ウェクスラー式と呼ばれるものになります。主に4つの側面からテストが行われ、言葉の力、知覚・認知、聞いた情報の記憶力、作業の速さがわかります。
就学前の幼児から、16歳11カ月まで使うことができ、100を基準、およそ90~110を平均域とした知能指数(IQ)が分かります。
田中ビネー知能検査V
最もポピュラーな知能検査のひとつです。乳児から青年期以降まで、広く使います。こちらもIQが分かります。
年齢ごとに、「この年齢相当の発達ならこの課題」というものがそれぞれ数問ずつ決まっており、全問クリアできるようになる年齢の一番上と、全問不正解になる年齢の一番下、つまり「何歳から何歳までの間に、できる・できないの境目があるか」のようなものが分かるまで検査が続きます。得意・苦手の差が大きい子は、検査時間が長くなりがちです。
K-ABCⅡ
K-ABCⅡは、上の2つと比較するとややマイナーな検査ではありますが、LDや、学校の勉強での困り感でもって検査を受ける場合には、使われることも多くなってきている検査です。
勉強で身につけた能力(漢字、計算など)と、学校の勉強によらない認知能力の2側面が分かります。
この2つの差が特徴的な結果になった場合には、注目すべきでしょう。例えば、勉強で身につく能力が、認知能力に比べて著しく低い場合、「本来の力を学校の勉強で発揮しきれていない何らかの理由がある」と考えることができます。
発達検査にはどのようなものがある?
次に、発達検査について紹介します。出生直後から使える検査が多いので、体の発達含め全体的な状態を知れるので、乳児期におすすめです。
新版K式発達検査2020(2001 改訂予定)
このK式の「K」は、京都の「K」。ですので、関東圏ではあまり使われることが少ない検査ではあります。ですが、関西圏では非常にメジャーで、乳幼児検診から療育手帳の判定まで広く使われている検査になります。
姿勢運動領域、認知適応領域、言語社会領域の3つの側面について、「実年齢○才に対して、できることのレベル(発達年齢)は○才」という、発達段階がわかります。
K式発達検査も「何歳から何歳までの間に、できる・できないの境目があるか」のようなものが分かるまで検査が続くので、田中ビネー同様、得意・苦手の差が大きい子は、検査時間が長くなりがちです。
遠城寺式乳幼児分析的発達検査
0歳から4才7カ月までの乳幼児向けの発達検査です。移動運動、手の運動、基本的習慣、対人関係、発語、言語理解の6領域が分かります。体の発達も分かるのが特徴です。この後説明するスクリーニングテストの特徴も兼ね備えています。自然な状態で子どもを観察し、その様子から発達の様子を見ます。
社会生活能力検査にはどのようなものがある?
発達障害の特性を捉えるのに、日々実は困っていることが数字に表れやすいのが社会生活能力検査です。こちらも、対象年齢などによっていくつか種類があります。
KIDS乳幼児発達スケール
0歳から6歳までが対象の乳幼児用の質問紙です。Kinder Infant Development Scaleの頭文字を取ってつけられています。
問診または、養育者自身が記入します。できることは〇、できないことは×をつけていき、発達の段階が何歳相当に当たるか、また実年齢との発達年齢との比の数字を算出します。
子どもの月齢、年齢によって4つの種類に分かれていますが、どのタイプも主に、運動、操作、理解言語、表出言語、概念、対子ども社会性、対成人社会性、しつけ、食事についての発達段階が分かります。
見ただけでピンとこない項目もありますが、運動、操作はそれぞれ粗大運動、微細運動、しつけは身辺自立の項目を指しています。
S-M社会生活能力検査
いくつかの質問が並んでいるので、できることは〇、できないことは×をつけ、普段のお子さんの様子を保護者の方が判定していきます。これも、実際の年齢に対して発達的にクリアしているのは何歳かという比率で数値が算出されます。
身辺自立、移動、作業、コミュニケーション、集団参加、自己統制の6側面が分かります。
特に、ASDで他者への関心が薄かったり、自分の気持ちをうまく伝えられなかったりすると、コミュニケーションや集団参加の項目が低くなったりすることがあります。
また、ADHDで危険認知が弱かったり、年齢相応に整頓や身支度をこなすのが苦手だったりすると、身辺自立や移動の項目が低く出たりすることは可能性として考えられます。
スクリーニングテストにはどのようなものがある?
発達障害の傾向があるかどうかを、最も直接的に調べるのがスクリーニングテストでしょう。スクリーニングテストにはどのようなものがあるのでしょうか?
AQ(自閉症スペクトラム指数)
Autism-Spectrum(自閉症スペクトラム)Quotient(指数)の頭文字を取っています。自閉症スペクトラムのスクリーニングテストです。
社会的スキル、注意の切り替え、細部への注意、コミュニケーション、想像力についてわかります。
それぞれの質問項目について「そうである」「どちらかというとそうである」「どちらかというとそうではない」「そうではない」の4つから選んでいき、得点を算出します。
MSPA(エムスパ)
Multi-dimensional Scale for PDD and ADHD の頭文字を取っています。
コミュニケーション、集団適応力、共感性、こだわり、感覚、反復運動、粗大運動、微細協調運動、不注意、多動性、衝動性、睡眠リズム、学習、言語発達歴と、広く調べることができます。それぞれの項目について1~5段階で「どの程度支援が必要な状態にあるか」が分かります。
親や、保育士など普段子どもの様子を見ている人それぞれが質問項目に答え、複数の目からチェックするのが特徴です。
検査を受けるメリット
本人の状態像が具体的にわかる
検査によって本人が、どの発達段階にあるのか、得意なところや苦手なところは何か、どのような発達障害の特性を持っているかを、目に見える形でわかるのは、検査を受ける大きなメリットでしょう。
本人が見せる困った行動の背景に、実は思わぬ特性が隠れていたということが、検査をきっかけに見えてくることもあります。
対応について結果に基づいて助言してもらえる
本人の状態像が詳しくわかれば、それに対して的確な対応をしやすくなりますので、検査者から、困ったときの具体的な対応を教えてもらえるでしょう。
例えば、「WISC-Ⅳでワーキングメモリという、聞いたことを記憶する力が苦手だと分かった」としましょう。
きっと「1度に伝える指示のボリュームを減らしてみてください」「メモなど目に見える形に残しておいて、あとで思い出せるようにしてみてください」など、今日から使える対策を教えてもらえるはずです。
診断名が確定することもある
もちろん検査単独で診断はつきませんが、ADHDやASDの子に多い検査結果の傾向というのは、一定存在します。ですので、そういった傾向があれば、お医者様から診断が降りるかもしれません。
診断がついたら、診断書などを発行してもらうことで、特別児童扶養手当など、行政の支援を利用することができることもあるので、積極的に活用しましょう。
検査結果報告書をもらえる
検査結果は、多くの場合数枚に簡潔にまとまった「所見」として保護者にも渡ることが多いです。それを手元に置いて、お子さんの理解の助けにする方もいれば、コピーなどを学校や療育機関など、一緒になって支援してくれるところの先生に見てもらい、情報を共有することも可能です。
検査結果の見方がわからない人は、ひとまず関係機関に目を通してもらうという人もいます。そこで勤めている人の多くは臨床心理士さんなど専門職ですから、補足もしてもらえるかもしれません。
検査を受けるデメリット
検査は確かに日々の行動を見続けて、トライアンドエラーを繰り返すよりも短い時間で、そして専門的な目を通して、さまざまなことがわかるので、とても便利です。
しかし、検査を受けるのはいいことばかりではありません。デメリットももちろんあるので、検査を受ける前には確認しておきましょう。
検査を受ける負担
子どもの状態をよく知りたいという、親や支援者側の気持ちは、とてもよくわかります。少しでも多く目の前の子どもについての情報を知って、この困りごとの原因を知りたいと思うでしょう。
しかし、ただでさえ理解力や、感情のコントロールに困難さを抱えている子どもが、1〜3時間程度かかる検査をすることは大きな負担になります。
子どもにとっては、単純に拘束時間が長いだけでなく、「初めての場所、初めての人に、長時間たくさんの難しい問題を出される時間」と感じられても仕方がありません。
また、検査を受けることによって「自分はできない子だから色々調べられているのではないか」と気に病む子どもも一定数います。
障がい告知のショック
検査の数字が良ければしんどくない、数字が悪ければしんどい、と単純に考えられないのが心の検査です。
結果を聞いて、自分の苦手だったことが、努力でなんとかなるものというよりも「特性」のせいなのだったのだと知って、落ち込む子もいます。
かといって検査の結果を知らされないことで、自分ことなのに、自分の意思が置いてきぼりになってしまうと感じる子もいて、人それぞれです。
闇雲に検査を受けるのではなく、検査を受けた後どうしていくかのシミュレーションをしてから受けるのが良いでしょう。
検査を受ける費用
医療機関で受診し、検査を受ける場合、またカウンセリングセンターなどで検査を申し込むとき、検査の費用は必ずチェックしておきましょう。
医療機関では、多くの発達障害の検査は保険適用となっているので、比較的安価ですが、カウンセリングルーム等、保険外の料金体系のところは、確認が必要です。
「検査の前の診察・カウンセリング代+検査数種類+結果を聞くための診察・カウンセリング代+診断書・所見代」のトータルを見積もりましょう。
例えば、カウンセリング機関であれば、検査前のカウンセリング5000円、検査5000円、結果を聞くための診察代3000円、診断書代3000円で、16000円ものお金がかかるケースもあります。
医療機関であれば保険適用の検査と診察になるので、もう少し安価に収まるでしょうが、診断書代は実費なので変わらず高価です。
なお、保健所や、児童相談所であれば、検査費用はかかりません。
特に、知的障害者の手帳である療育手帳を取得しようと考えている人は、まず検査を受ける場所の第一選択は児童相談所になるかと思います。
受けすぎると正しい数値がわからない
子どもの発達が気になると、心配になってあちこちに相談しに行き、そのたびに検査を取って、何度も調べてもらおうとする人が時々いますが、これはあまりよい方法ではありません。
何度も検査を受けてしまうと、子どもが問題を覚えてしまい、「どこかで見たことある問題だ」と思って問題に取り組むので、検査の数字が引きあがってしまうことがあります。
そのため、数字が高いのは単に得意だからなのか、前に同じことをしたばかりだからなのか、分からなくなってしまい結果の解釈がぼやけてしまいます。
まとめ
この記事をまとめます。
- 発達障害を調べる検査は、知能検査、発達検査のほか、社会能力検査、スクリーニングテストなどがある
- 検査ごとに細かくいくつかの領域に分かれており、様々な側面から知能や発達、発達障害の特性を見ることができる
- メリットは、「具体的に子どもの状態が数字でわかること」、「それを用いてより具体的で効果的な支援につなげていけること」
- デメリットは、「検査を受ける子ども本人の時間的な負担」、「精神的なショックがある可能性があること」、「費用がかさむ可能性があること」、「受けすぎるとかえって子どもの状態が分かりにくくなること」
効果的に検査を活用して、子どもの特性を知り、のびのびと育っていく支援の手がかりを手に入れましょう。