こんにちは!こんばんは!今回もとっても役立つ発達障害に関するノウハウや情報を提供させていただきます!
発達障害の子が本を読めない症状はディスレクシアと呼ばれています。
日本では小学生の約8%がディスレクシアであるといわれています。
そして、他の発達障害と同様に改善は困難であるといわれています。
ですが最近の研究では早期介入により大幅に改善する可能性が示唆されています。
今回は最新の研究結果から判明してきた内容と改善へ導く対策、そして生活しやすくするために活用したいツールをお伝えいたします。
目次
発達障害の子が本を読めないのはなぜ?
ディスレクシアは学習障害の1種で、読み書きに困難を示します。
知能に問題があるわけではなく、言語を処理する脳の働きに違いがあるため現れる症状です。
ディスレクシアの症状は個々により異なりますが、主な症状として文字と音を関係づけて理解することに問題を示します。
また単語や文章を問題なく読むことができても、理解するのに困難を示す子もいます。
この記事を読めば、なぜディスレクシアの子は本が読めないのか、そして改善するためにはどのような対策を取ればよいのかが明確にわかります。
ディスレクシアの原因
ディスレクシアの原因は眼の問題として捉えられがちです。
しかし実際は言語を処理する脳に問題があるため現れる症状です。
ディスレクシアの原因はまだはっきりと解明されていません。
ですが徐々に明らかになりつつあるようです。
ここではディスレクシアの原因として考えられている要因についてお伝えいたします。
ディスレクシアの原因1|遺伝要因
ディスレクシアの原因の1つとしてあげられているのが遺伝です。
海外ではディスレクシアのある子の兄弟の約40%は同じように読書に困難を抱えており、その親の約49%もディスレクシアであるといわれています。
また、ディスレクシアは1つの遺伝子だけではなく、いくつかの特別な遺伝子により引き起こされていると考えられています。
そして、それらは脳の発育や伝達に影響を与えると考えられています。
参考資料:Is Dyslexia Genetic | Understood – For learning and thinking differences (ディスレクシアは遺伝か?)
ディスレクシアの原因2|環境要因
どのような学習に関してもいえることですが、良い指導者により効率的な学習方法で学ぶことは、子どもの学習意欲や能力を向上させます。
反対にこれらが提供されない場合は学習意欲や能力を低下させる場合があります。
特にディスレクシアになりやすい子が、文字に関してきちんとした指導を受けなければ、ディスレクシアを発症する可能性は高まります。
そのためディスレクシアになりやすい子にはまわりの大人が注意をして早くから対策をする必要があります。
ディスレクシアの原因3|言語処理能力の異常
アルファベット言語圏でのディスレクシア児・者の脳画像研究の結果、ディスレクシア児・者では音韻処理と単語形態認識に関わる脳の活動が弱っていることがわかっています。
音韻処理とは音を耳で聞き、文字に結び付ける働きです。
この機能が弱っているため、ディスレクシアの子は文字と音を関連付けて理解することに困難を示します。
単語形態認識とは、目で見た単語を文字のまとまりとして認識する機能です。
この機能が弱っているため、ディスレクシアの子は文章を読むときに1文字ずつ区切って読んだり、変な箇所で文章を区切ったりといった症状を示します。
ですが、これらの弱っている脳機能は一定期間の治療的介入により活動が出現することも脳画像の研究により明らかになっています。
そのため、ディスレクシアは効果的な対策をおこなえば改善する可能性があるといえます。
参考資料:小児の高次脳機能障害臨床のトピックス「読字障害(発達性ディスレクシア)児の機能画像」
ディスレクシアの症状
ディスレクシアは通常小学生になり読み書きの学習をしっかりとおこなうようになってから明らかになります。
ですがディスレクシアは早期発見・早期支援が好ましいとされていますので、ここでは小学生におけるディスレクシアの症状と一緒に、幼稚園児における症状もいくつか紹介いたします。
・絵本を読みたがらない
・自分の名前を書くことに興味を持たない
・馴染みのあるものでも単語が浮かばすに「あれ」や「それ」などの指示語を使う
・段取りを説明しても覚えるのが困難で指示に従うのが難しい
・文字と音が一致しない
・似ている文字を間違えて書く (「め」と「ぬ」、「わ」と「ね」、「6」と「9」など)
・単語を1文字ずつ区切って読む(逐次読み)
・単語や文節の途中で区切る
・単語の文字の順番に戸惑う
・読むのが非常に遅くひんぱんに間違える
・文末を勝手に作って読む
・自分の読み誤りに気付かない
・文字が動いたりぼやけているように見える
・口頭では問題なく答えられるが、書くのは困難
・文字を真似して書くのが苦手で通常より時間がかかる
・促音 に誤りが多い (例.がっこうの「っ」)
・撥音に誤りが多い (例.にんじんの「ん」)
・長音に誤りが多い (例.ロープの「ー」)
ディスレクシアの症状がある場合、読み書きとは直接関係のない障害を抱えている場合もあります。
・算数障害(ディスカリキュリア)
・ワーキングメモリが低い
・注意欠如多動性障害(ADHD)
・発達性強調運動症(OCD)
ディスレクシアの支援
パソコンやタブレットなどにはディスレクシアをサポートしてくれる便利な機能があります。
また文部科学省は音声教材を発達障害児に対し無償で提供しています。
ここではディスレクシアを支援してくれる機能や支援のいくつかをご紹介いたします。
音声読み上げ機能
まずはじめにパソコンやタブレット・スマホで使用したい便利な音声読み上げ機能を紹介いたします。
ワードの音声読み上げ機能
最新バージョンのワードには文章を音声で読み上げてくれる機能があります。
ワードの音声読み上げ機能の設定方法
「校閲」タブにある「音声読み上げ」機能をクリック。
ショートカットキー 「Alt + Ctrl + Space」でも設定できます。
設定の詳細はWord(ワード)の文章を人工音声で自動的に読み上げる – パソコントラブルQ&A (724685.com) をご参照ください。
Microsoft Edge の音声読み上げ機能
Web ブラウザー「Microsoft Edge」には、表示したWebの内容を読み上げる機能があります。
Microsoft Edge の音声読み上げ機能の設定方法
1.Edge で音声で読み上げしたいサイトのページを開く。
2.開いた画面上で何もないところを右クリック。
3.現れたメニューから「音声で読み上げる」を選択。
設定の詳細は 新しい Microsoft Edge の「音声で読み上げる」機能とは – パソコン用語解説 (724685.com)をご参照ください。
メモ帳やWeb上の文章を読み上げる「拡大鏡」機能
Windows10の「拡大鏡」機能ではすべてではありませんが、文章を読み上げてくれる機能があります。
「拡大鏡」の設定方法
Windows ロゴ キーを押しながら正符号 (+) キーを押します。
メモ帳やWeb上などの文章で読み上げて欲しい箇所の先頭を選択して再生ボタン(▶)を押すと音声で読み上げてくれます。
拡大鏡をオフにするには、Windows ロゴ キー を押しながら Esc キーを押します。
スマホやタブレットの音声読み上げ機能
スマホやタブレットにも音声読み上げ機能があります。
iPhoneの音声読み上げ機能「VoiceOver」の設定方法
[設定]アプリ ▶[アクセシビリティ]▶[VoiceOver]をONに。
紙の文書をスマホでスキャンして読み上げる|Microsoft Lens
Microsoft Lensは、紙の文章をスキャンしてWordやPDFなどの他の形式に変換して保存することができる便利なアプリです。
そしてMicrosoft Lens には、スキャンした文章を音声で読み上げてくれる「イマーシブリーダー」も搭載されています。
エクスポート先で「イマーシブリーダー」を選択して、再生ボタン「▷」を押す音声で読み上げます。
スマホをかざすだけで文字を読み上げる|Seeing AI
Seeing AI はMicrosoft 社が視覚障害者のために開発したアプリです。
短いテキストなら面倒な操作は必要なく、スマホをかざすだけで音声で読み上げてくれます。
また紙の文章でもスキャンをするだけで音声で読み上げてくれます。
実際にSeeing AI を使っている方のビデオがありますので、ご覧ください。
音声認識ソフト
パソコンのマイクに向かって話すだけで文字を文章化してくれる便利なソフトで、パソコンを使える年齢になったら、ぜひ活用したいツールです。
いろいろなソフトが販売されていて、価格や機能が異なりますので、「音声認識ソフトのおすすめ人気ランキング3選」のような音声ソフトに関して説明しているサイトを参考にして、自分に合ったソフトを選びましょう。
音声教材
音声教材は教科書を音声で読み上げてくれる教材です。
文部科学省より依頼を受けた制作団体により制作されており、発達障害のため教科書の文字や図形等を認識することが困難な子へ無償で提供される教材です。
制作団体は下記の6団体で、対応している教科書は各団体により異なります。
また使用する媒体も各団体により異なり、パソコンやタブレットで使用するものや、教科書をペンでタッチして読み上げるものなどがあります。
音声教材のおススメや使い分けに関しては、音声教材(電子教科書)を使い分けよう! | 平林ルミのテクノロジーノート ALT で解説していますのでご参照ください。
スマホやタブレットのカメラ機能をノートとして活用
黒板の内容をノートに写す板書が困難な場合は、スマホやタブレットなどのカメラ機能を利用して撮影し、印刷をしてノートとして利用することもできます。
対応は学校により異なりますので、まずは相談してみても良いでしょう。
ディスレクシア改善対策
先ほどお伝えした脳画像診断の結果から、ディスレクシアは効果的な対策をおこなえば改善することが示唆されています。
そのためここではディスレクシアを改善するための対策方法に関してお伝えしたいと思います。
ディスレクシア改善対策1|本の読み聞かせ
本の読み聞かせはお子さんの語彙力と聞き取る力を養うことができます。
また、本への興味や想像力も養うことができます。
読み聞かせに興味を持ってもらうために、お子さんが興味を示す内容の本を選んであげることが大切です。
図書館でいろいろな種類の本を借りてきて、お子さんが興味を示す本を見つけてあげることも良いでしょう。
また、EhonNavi では年齢別におススメの絵本をたくさん紹介しています。
各絵本のみどころも詳しく解説しているのでお子さんに合う絵本を探すのにとても役立ちます。
子どもは気に入った絵本を何度も読んで欲しいと言ってくることもあると思いますが、忍耐強く何度も読んであげましょう。
それにより本への理解が深まり言葉を覚えていきます。
ディスレクシア改善対策2|本を読む
本を読むことはお子さんのディスレクシア改善に役立ちます。
でもディスレクシアのお子さんは本に興味がない場合がほとんどですので、どのようにして本を読ませたらいいのか悩んでしまいますよね。
そこでここではお子さんに本に興味を持ってもらうためのポイントをご紹介いたします。
本を選ぶポイント1|キャラクターものの本でもOK
アンパンマンやゴジラなどのお子さんの好きなキャラクターものの本でも構いません。
大切なことはお子さんが興味を持つ本を読ませてあげることです。
これらの本でも字を覚えることもできます。
そして、本に興味を持ち、別のトピックの本を読みたいと思うきっかけを作ることもできます。
本を選ぶポイント2|お子さんのレベルに合った本を選ぶ
お子さんの本への興味を持続させるために、レベルに合った本を選ぶことが大切です。
下記を参照にしてお子さんのレベルに合った本を選びましょう。
お子さんレベルに合った本の選び方
まずはお子さんにどのページでもよいので本を開き声に出して読んでもらいます。
そして、読めないあるいは分からない単語があるごとに指を立てて、そのページで何個分からない単語があるかを示してもらいます。
その結果1ページに2、3個だったら問題ありません。
ですが、1ページに5個以上分からない単語がある場合は、その本が子どもにとって難しすぎであることを示しています。
そのためそれらの本を読んでも挫折してしまう可能性が高いです。
まだ難しい本は読み聞かせをしてあげることもおススメです。
お子さんが興味を持つ本であり、1ページに分からない単語が2,3個である。
簡単な本からレベルアップする方法
お子さんが簡単な本ばかり繰り返し読むことに関して心配をする必要はありません。
簡単な本でも読むことにより、本を読むスキルを上達させて自信を育むことができます。
ディスレクシアの子にはこのような対策が特に必要です。
そしてこのお子さんの本への興味を上手に利用して少しレベルアップした本を読むように促します。
お子さんがいつも読んでいる本を読むときに、その本に関連した内容で少しレベルアップした本をお子さんに示し、「その本を読んでもいいけど、読み終わったらこっちの本も楽しいから読むようにしようね」というような形で促します。
関連した内容であればお子さんも興味を持ってくれる可能性が高いです。
そして新しい本を読むことにより、新しい単語や発想に触れることができ、子どもの知識を増やすことができます。
参考:Video: How to Choose Books for Struggling Readers | Understood – For learning and thinking differences (ビデオ:読書が苦手な子への本の選び方)
ディスレクシア改善対策3|ゲームで楽しみながら改善
医学博士の平岩幹男先生が開発した「読むトレGO!」はディスレクシアを改善するトレーニングゲームです。
実際に平岩先生が診察しているディスレクシアのお子さんたちのご協力のもと開発されました。
平岩先生によるとディスレクシアの改善のためには下記の3つのトレーニングが必要です。
1)文字を見て声に出して読む
2)文字を音のまとまりとして認識
3)音を聞いて文字を選ぶ
「読むトレGO!」ではゲーム感覚で楽しみながらこれらのトレーニングがおこなえますので、継続性が期待でき、大きな効果を生むことが期待できます。
まとめ
読み書きに問題があることは多くの困難を当事者に与えます。
そんなお子さんの自信と向上心を育てるには、親がお子さんを励まし支援することが重要です。
今回お伝えした改善対策を取り入れて、ぜひお子さんの可能性を大きく羽ばたかせてあげてください。
この記事がディスレクシアで悩む方たちにとって少しでも役に立ちましたら幸いです。