こんにちは!こんばんは!今回も知っておきたい発達障害に関するノウハウや情報を提供させていただきます!本日は「発達障害 農業」についてです。

皆さんは「農福連携」という言葉をご存じですか?

今、福祉分野と農業分野の要素を兼ね備えた形態が注目されています。
障害者の人が農業に携わることで、自身の特性を活かし、社会で活躍できる場が増えているのです。

発達障害の方も例外ではありません。
本日は発達障害の方が農業に携わるメリットや作業の際の工夫をお伝えします!

なぜ発達障害の人に農業なのか?

現在農家は慢性的な人手不足に悩まされています
一方、障害者のある人が社会進出を希望した際に、なかなか求人数が追い付いていないという側面があります。
このような両者の課題に、農業と福祉の両方の要素を兼ね備えた「農福連携」が注目されているのです。

障害者の人がその特性をポジティブに活かし、農業に取り組むことで、新たな付加価値を生むことに成功しているケースが出てきています。

障害者の就労の選択肢の一つとして、農業に従事することを検討してみてはいかかでしょうか?

発達障害の人が農業に取り組むメリット

発達障害の方が農業に取り組むと以下のようなメリットがあります。

障害の特性を活かせる

農業には多様な仕事があるため、様々な作業の分解ができます。
結果として、色々な障害の人が携わることができることが農業の最大のメリットではないかと思います。

農業は三次産業すべての要素がある

農業には、生産(一次産業)、加工(二次産業)、流通・販売(三次産業)すべてがあります。
それが、所得の向上や雇用の場の創出、地域の活性化をもたらします。
色々な場面で活躍できることにより、障害の特性に合った仕事に従事することができるのです。

自己効力感が高まる

農業は作ったものが形として見えます。
土を耕すこと、世話をすること、最終的に「野菜」を収穫する一連の流れが目に見えます。
すべての作業に従事することがなかったとしても、季節ごとの様々な作業を経て、野菜を作ることができたという達成感が、自己効力感の向上につながります。

自己効力感とは?

自分がある目標を達成するために、正確な行動を選び取り、実現できるということを認知すること。ある目標を達成できるという「自信」。

日の光を浴びて生活リズムが整う

農業は基本的に日中に作業します。発達障害の人の中には、生活リズムが安定しない人が少なくありません。
しかし、農業に従事することで、生活リズムが整いやすくなります
日中、日光の下で農作業をし、心地よい疲労をすることで睡眠の質が上がり、睡眠薬の量が減ったという声もあります。

ASD(自閉症スペクトラム)の特性を活かせる

農業では、特定の作業を長時間繰り返さなければならないこともあります。
こうした時に特性を発揮するのが自閉症スペクトラムの人です。
決められた作業をきちんと決まり通りに続けることが得意なため、検品作業なども精度高く行うことができるのです。

参考:ベネッセ教育総合研究所

発達障害の人が農家で働くときの支援のポイント

発達障害の人が農業に従事する際の支援のポイントをまとめたガイドブックがあります。(『農業における障がい者就労支援のためのガイドブック』)
その中から要点をまとめたいと思います。

曖昧な指示を避ける

発達障害の人(特に自閉症スペクトラム)の中には、曖昧な指示を理解することが苦手な人がいます。
その際「いつまでに」「どのようなやり方で」「何をするのか」を明確に指示することが大切です。

視覚優位の人には本人が理解しやすい手段で伝える

発達障害の人の中には視覚優位の人がいます。
その人たちに向けて、言葉だけでなく、文字やイラストを用いて、作業手順を説明することが必要になってきます。

視覚優位とは?

発達障害の人の中には、言葉のみでの説明を理解するのが苦手な人がいます。そうした人には、イラストなどを用いて、目で見て理解できるようにする工夫が必要です。

急な変更は速やかに伝える

農業はその日の天候などにより、予定していた作業を急遽変更する場合があります。
発達障害の人の中には急な変更に対して、臨機応変に対応することが苦手な人もいます。
ですから、急な変更がある際には速やかに伝え、変更する時間、場所、代わりにどの作業をするのかを具体的に伝えます。

ペース配分・休憩

発達障害の人の中には、作業に過度に集中してしまい、自分の疲れに気づかずに作業を続けてしまう人がいます。
そうした人には定期的に声をかけ、疲れのサイン(ミスの増加や、作業が雑になるなど)を見逃さずに、休憩を促すことが大切です。

危険への対処

有毒動植物、熱中症、農具や農業機器の取り扱いなど、農業には様々な危険があります
発達障害の人の中には、感覚が過敏で作業に集中できない人がいます。
そのような人が集中できる環境を作るのが危険への対処の第一歩です。

一方で、感覚が鈍感な人もいます。けがをしても気づかないことが考えられますので、特に注意が必要です。

これらを回避するために、作業前には必ず体調の確認を行い、いつもと違う場合には農機具の操作は控えます。
また定期的に応急手当の訓練を行い、イラスト、図を用いたわかりやすい応急手当のマニュアルをすぐに見ることができる場所に提示しておきます。

参考:農業における障がい者就労支援のためのガイドブック

特例子会社が農業に参入した実例

特例子会社「株式会社ひなり」とは、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(以下CTC)を親会社とする特例子会社です。
CTCは静岡県浜松市の京丸園株式会社から作業を請け負っており、ひなりの社員は京丸園で実際の作業に従事しています。

この農作業の請負による農福連携スタイルは「ひなりモデル」と呼ばれています。農業と、福祉、企業との連携の模範とされ、平成24年度の浜松市チャレンジド企業としても表彰されたそうです。

ひなり全体では、社員101名のうち75名が障害のある社員となっています。

特例子会社とは

特例子会社は、障害者雇用の促進と安定のために、障害者の雇用において特別の配慮をする子会社のことです。
日本では、従業員50名以上の企業には障害者を雇用する義務があります(法定雇用率=障害者を雇用する割合2.2%)
親会社は自社の特例子会社の社員も障害者雇用しているとみなすことができるので、法定雇用率の達成がしやすくなります。

実際の取り組み:ミニちんげんの出荷調整作業

ひなりは、ミニちんげんの作業効率アップのために京丸園に作業工程を提案しました。

作業工程

1. 収穫はトレーごと行います。

2. 台車に収穫したミニちんげんを大量に積み、一気に作業場まで運びます。

3. 大きな根は機械で切ります。作業場を作ったときに根切りの機械を導入しました。(CTCの提案で新たに作業場を作りました)

4. 最後の仕上げの細かな調整作業をひなりの社員が行います。これは人の手でしかできません。

5. 梱包作業は、京丸園の社員が行います。

この提案により、同人数、同作業量の調整作業にかかる時間が半分になったそうです。ポイントは、人の動きが管理された導線の整備です。これにはIT会社のノウハウが反映されています。効率アップはITの会社が農業に参入したからこそ得られる成果でした。

ひなりモデルのポイント

ひなりには大きく二つのサポートポイントがあります。

サポートマネージャーの存在

ひなりでは、障害のあるスタッフに必ずサポートマネージャーが随行します。
サポートマネージャーは障害のあるスタッフの支援と指導をすることです。
農家から作業内容を聞き取り、「作業手順書」を作成し、スタッフに説明します。

スタッフの働きやすさへの徹底的な配慮

様々な障害のあるスタッフがいるので、毎朝健康チェックを行っています。
スタッフが作業を上手く行えない場合は、「スタッフの能力の問題」ではなく、その理由を考え、手順や説明を工夫しているそうです。

参考:マイナビ農業
   Challenge LAB

この「ひなり」のように、特例子会社の中には、本格的に農業に参入している企業があります。

農業に従事できる場所

農業に従事するには様々な形態があります。ご自身に合ったものを探す参考にしてください。

一般就労

農家(法人を含む)や企業等での雇用

特例子会社

現在500以上ある特例子会社のうち40社程度が農業に参入しています。

以下は農業へ参入している特例子会社の一部です。
農業へ参入している企業「帝人ソレイユ」を紹介しています:Sankei Biz
農業へ参入している企業「クボタサンベジファーム」のサイトです:クボタサンベジファーム株式会社

特例子会社の一覧です:特例子会社一覧

就労継続支援

就労継続支援の場で農業に携わることもできます。

就労継続支援A型

就労継続支援A型は、雇用契約を結び、最低賃金や労災、雇用保険などが保証されます。
一方で、複雑な業務を要求される可能性があるので、比較的障害が軽めの方に適しています。

就労継続支援B型

就労継続支援B型は、雇用契約を結ばない代わりに、短時間の勤務も可能です。障害が重めの方も無理なく、作業に従事することができます

農業に携わることのできる就労継続支援B型事業所「アグリシステム羽沢」を紹介しています:LITALICO仕事ナビ

農業を行っている横浜市の就労移行支援・就労継続支援事業所:わくわくワーク大石

全国の就労継続支援事業所検索:LITALICO仕事ナビ

就労移行支援

就労移行支援事業所でも農業での就職を目指せます。
近年は、法人が農業へ進出するケースも増えているので、農園から障害者雇用での求人が出ることもあります。

就労移行支援では、農作業でも必要となってくるコミュニケーション能力やマナーの訓練を行います。事業所によっては、施設内に農園がある場合もあり、実際に農作業を体験できる場合もあります。

全国の就労移行支援事業所検索:LITALICO仕事ナビ

参考:CHALLENGED ASO

地域活動支援センター

地域活動支援センターで、地域の実情に応じ、創作活動または生産活動の機会を提供しています。そのなかで農業に取り組んでいる施設もあります。

前半は就労継続支援B型事業所を紹介しています。
紹介企業:八重田ファーム

後半は就労継続支援A型事業所です。
紹介企業:シグマファームとういん

まとめ

最後まで読んでいただきありがとうございます。

本日は以下のことをお伝えしてきました。

  • 障害者雇用で、なぜ今農業が注目されているか
  • 農業に従事するメリットはなにか
  • 発達障害の人が農作業をする際の支援のポイント
  • 農業に参入している特例子会社の実例
  • 農業に従事できる場所

これまで就労の選択肢として、農業を全く考えたことがなかった方も多いのではないかと思います。
しかし、農業には発達障害の人が自分の特性を活かせるケースも多々あるようです。
人によって、合う合わないはもちろんあると思いますが、まずは、地域活動支援センターや就労継続支援などで農作業に触れてみるのも良いかもしれません。

この記事が皆様の生き方の選択肢を増やす一助になれば幸いです。