こんにちは!今回も知っておきたい発達障害に関するノウハウや情報を提供させていただきます。本日は「知的障害と発達障害の違い」についてです。
調べるものによって、様々な表現が使われていますよね。
たとえば、
- 知的障害は発達障害の一部である
- 発達障害と知的障害は重複することがある
- 明確な区別はついていない
このような文章をバラバラに見て混乱している方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、このような表現を詳しくみていき、それぞれがどう分類されているのかを解説しています。
目次
【前提事項】発達障害と知的障害の違い

発達障害と知的障害の違いについて調べる時に、意識して欲しい前提があります。
ご自身が医学的な違いを知りたいのか、それとも行政的な違いを知りたいのか、という点です。
実は、どちらの視点から見るかによって発達障害と知的障害の違いについて異なる部分があるのです。ややこしいですが、様々な背景が絡み合って現状に落ち着いているので統合されるのは難しそうです。
貴方もこんがらがってしまって、この記事にたどり着いたのではないでしょうか。
医学的・行政的な違いをそれぞれ見ていきましょう。
医学的な違い
「知的障害は発達障害のなかのひとつ」?
医学的には知的障害は発達障害のひとつと言われています。
「精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版」において、発達障害は以下の7つに分類されます。
- 知的障害
- コミュニケーション障害
- 自閉スペクトラム症(ASD)
- 注意欠如・多動症(ADHD)
- 学習障害(LD)
- 発達性協調運動障害
- チック症
※「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害」のことを現在は「自閉スペクトラム症」という診断名で統合されています
発達障害の分類として代表的で、皆さんもパッと思いつくのはASD・ADHD・LDの3つが多いかと思います。そこに「知的障害併存の有無」という説明が加えられているのをよく見ます。
ここだけを取り上げると「発達障害と知的障害は全くの別物なのかな?」という誤解が生まれやすいと感じます。また、後ほど紹介する行政の視点だと、この表現は正しいのです。
「知的障害は発達障害の一分類」。医学的なこの前提を知っているだけで誤解は少なくなるでしょう。
ところで、「発達障害」と一口に言っても7つも分類があることに驚かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
発達障害であるか否か、どの分類に当てはまるのかは素人では判断ができません。不安に思うことがあれば専門家に相談しましょう。
「発達障害と知的障害の明確な区別はついていない」?
医学的な分類を踏まえたうえでこの文章を読むと、少し違和感があるのではないでしょうか。知的障害は発達障害の一分類なので、明確な区別はつけられません。
それだけでなく発達障害のそれぞれの分類についても明確な区別をつけることは難しいです。
なぜなら、発達障害のどの分類に当てはまるかは、一定の条件を満たすことで診断されるものが多いためです。たとえば、ADHDと診断するためには「このような条件に当てはまる場合にはADHDと診断します」というような細かい条件が5つほど設定されており、その条件を満たすとADHDと診断されます。
診断は条件に合致するかどうかだけでなく、言語障害の有無、他に併存している分類があるか、など様々な要素を含めて下されるものです。どのような傾向があるかなど、比較的曖昧な要素も含まれます。
様々な原因で不安症やうつ病など二次障害が起こる場合もあります。
医師のなかでも正確に分類を判断できる専門医は比較的少ないと言われています。自己判断でわかるようなものではないため、不安なことがある場合には専門家に相談するようにしてください。可能であれば複数の医療機関や専門機関へ相談するのがベストです。

行政的な違い
一方で行政的には知的障害と発達障害は分けて考えられます。知的障害や発達障害は日常生活に支障をきたしてしまう場合も多く、何らかの支援が必要な方がいらっしゃいます。
その支援や援助の根拠となる法律が異なるのです。
具体的には、発達障害は「発達障害者支援法」、知的障害は「知的障害者福祉法」が制定されています。
手帳も異なります。発達障害者支援法では精神保健福祉手帳、知的障害者福祉法では療育手帳が交付されます。
発達障害 | 発達障害者支援法 | 精神保健福祉手帳 |
知的障害 | 知的障害者福祉法 | 療育手帳 |
また、「発達障害者支援法」では支援や援助だけでなく、障害の有無によって分け隔てられることがない社会の実現も目的とされています。
それぞれの手帳についてや行政サービスについては他の記事でもご紹介しています。もっと詳しく知りたい方は是非併せてお読みください。
「発達障害と知的障害は重複することがある」?
医学的な視点でこの文章を見ると、少し違和感がある表現ですよね。しかし、行政の視点であればどうでしょう?この説明は成り立ちます。
どちらにせよこの文章の意味合いは「発達障害の分類のうちひとつだけを発症するとは限らない」「発達障害の分類のうち、複数が重複して発症する場合があるし、他の障害を併存する場合もある」ということだと思います。
発達障害と知的障害が重複している、要するに知的障害を伴う発達障害も発達障害者支援法の対象となります。
ただし、学習障害と知的障害の併存は基本的にはありません。
文部科学省による学習障害の定義に「全般的な知的発達に遅れがない」という文言が含まれているからです。
広義の発達障害、狭義の発達障害
他にも「発達障害」は、「広義のもの」と「狭義のもの」と2つの捉え方をできる言葉です。

そう。大きくとらえる「広義の発達障害」とは、「=発達期に障害を持つ」という意味です。言葉の字面をそのまま解釈したイメージです。すると、そこには「知的障害」や「コミュニケーション障害」「身体障害」も入ってきます。これは広義の学術的な分類でそう示されている場合があります。
そして、一般的に言われる「自閉症スペクトラム(ASD)」「注意欠陥多動性障害(ADHD)」「学習障害(LD)」等は、「狭義の発達障害」の分類になるのです。「発達障害者支援法」では、この狭義に類する障害や症状が出ている者を対象としています。つまり、日本の行政上の発達障害の定義は、こちらの狭義に方に当てはまっているというわけです。

参考動画:精神科医の解説【知的障害・発達障害の違い】
以下の動画でも【知的障害と発達障害の違い】について、わかりやすく解説されています。
まとめ
『発達障害』という言葉はあちこちでそれぞれの意味合いで使われていることがあります。いろいろと情報がこんがらがってしまっていたのではないでしょうか。
今回はそんな混乱を解消するために様々な表現に沿った形で解説してみました。
- 医学的な違い
- 行政的な違い
- 広義・狭義の意味合い
がおわかりいただけたのではないかと思います。情報を分けて見てみると、すっきりしますよね。この記事を読んでくださった方の情報収集に少しでもお役立ていただけたら幸いです。