こんにちは!こんばんは!今回も知っておきたい発達障害に関するノウハウや情報を提供させていただきます!本日は「発達障害にまつわる略語」についてです。

発達障害について調べていると、専門用語やアルファベットの略語が多いと思いませんか?

代表的な略語は知っているけれど、略語だけを見てもピンとこない、意味があいまいな場合もあると思います。そこで今回は、発達障害に関する略語について解説しますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

発達障害における略語

略語とは、医療で使用される診断名や専門用語を言いやすさや記載しやすさのために略したものです。

略語の判断基準

基本的に医療従事者間で使用されることが多いですが、最近は一般の文献などにも使われる略語が増えてきました。

厚生労働省が発表している発達障害についての文献にも、補足とともに略語が使用されています。

DSM-5では発達障害は、知的障害(知的能力障害)、コミュニケーション障害、自閉スペクトラム症(ASD)、ADHD(注意欠如・多動症)、学習障害(限局性学習症、LD)、発達性協調運動障害、チック症の7つに分けられています

e-ヘルスネット 厚生労働省より

最近は見かけることが多くなった発達障害の略語ですが、ほかにも種類があります。ここからは、発達障害の分類ごとに見ていきましょう。

発達障害の分類

自閉症、アスペルガー症候群を含む広汎性発達障害(現在は自閉症スペクトラム障害+レット障害)と、注意欠陥多動性障害、学習障害に分かれており、それぞれの障害が重複することもあります。

アスペルガー症候群と学習障害には知的障害の併発はありませんが、自閉症と注意欠陥多動性障害には知的な遅れが伴う場合があります。

発達障害の概念図
発達障害の概念図

この分類表で参考にしている「DSM-5、IV-TR」(精神疾患の診断・統計マニュアル )、「ICD-10」(WHOが定めた世界疾病分類第10版)はどちらも世界的に使用されている診断基準です。

しかし両者は発達障害の分類の解釈が若干異なるため、今回は発達障害者支援法で使用されているICD-10に基づいた症状名を使用して解説します。

自閉症スペクトラム障害(広汎性発達障害)

発達障害の3つの大きな分類のうちの一つです。100人に1人~2人いるといわれています。

自閉症スペクトラム障害

ASD

Autism(自閉症) Spectrum(連続体) Disorder(障害)

ASDは2013年にDSM-5によって発表された比較的新しい概念で、自閉症障害、小児期崩壊性障害、アスペルガー障害の総称です。

ASDは「対人関係およびコミュニケーションの障害」と「パターン化した行動、こだわり・興味のかたより」の症状が共通しています。

ASDはひとつひとつ独立して捉えるのではなく、色が連続して存在する虹のように症状を捉えるという意味でスペクトラムというワードが使用されています。

対人関係およびコミュニケーションの障

  • ごっこ遊びができない
  • 目をあわせられない
  • 感情の共有ができない
  • 仲間に興味がない
  • ジャスチャーの意味が分からない

パターン化した行動、だわり・興味のかたより

  • 手をひらひらさせる
  • 予定が変わることへの抵抗
  • 毎日、同じことをすることにこだわる
  • 感覚のアンバランス

広汎性発達障害

自閉症スペクトラム障害という名称ができる以前は、以下の名称が使用されていました。

PDD

Pervasive(広くゆきわたるさま) Developmental(発達上の) Disorders(障害群)

自閉症スペクトラム障害とほぼ同義語ですが、自閉症スペクトラム障害のには分類されないレット障害を含むことが特徴です。

ICD-10に基づいている発達障害者支援法の発達障害の分類では、現在もこの名称を継続して使用しています。

自閉症

Autismとは、スイスの精神医学者オイゲン・ブロイラーによる造語です。

AD

Autism(自閉症) Disorder(障害)

ギリシャ語の‘autos-’(自己)と‘-ismos’(状態)を組み合わせて‘Autismus’、になっています。現実生活から退却して,自己中心の空想的な精神生活が優越する精神状態をイメージしたものと考えらているようです。

対人関係とコミュニケーションの困難さ、こだわりの強さが特徴で、知的障害のない場合から重度の知的障害を伴うもあります。

アスペルガー症候群

自閉症スペクトラム障害のうち、知的障害および言語障害を伴わないグループです。

AS

Asperger(アスペルガー)syndrome(症候群)

オーストリアの小児科医アスペルガーが「自閉的精神病質」として紹介したことから、アスペルガー症候群の名前がつきました。

周囲とのコミュニケーションに独特な感性があり、相手を怒らせるなどが頻回になってしまいます。幼少時は理由もわからず孤立していたものが、大人になり困って診断を受ける場合もあるそうです。知的な遅れがないために比較的コニュニケーションがとりやすい特徴があります。

小児期崩壊性障害

2歳までは普通に成長していた子どもが、言葉が通じなくなる、しゃべらなくなるといった症状が出るものです。

CDD

childhood(子供時代) disintegrative(要素に分解する傾向) disorder(障害)

2歳~5歳で退行がはじまり、6カ月程度経過したのち自閉症のような症状が出現します。

特定不能の広汎性発達障害

自閉症スペクトラム障害のような多様な症状が重く出ているが診断基準を満たさず、さらにほかの精神疾患や人格障害でもない場合に用いる名称です。

PDD-NOS

Pervasive(広くゆきわたる) Developmental(発達上の) Disorder(症候群) – Not Otherwise(それ以外の) Specified(仕様が)

レット症候群

レット症候群は、女児のみに発症する遺伝性の神経発達障害です。

略語なし

Rett(1966年ウィーンのレット医師が発表した)症候群

発症率は1万人に0.9人というまれな障害であり、遺伝子異常が原因のため自閉症スペクトラム障害とは区別されます。

生後6カ月~4歳くらいまで正常に成長し、言語能力と社会性が退行します。頭位の成長が遅れることでわかる場合もあるようです。その後身体の障害と重度の知的障害が出現します。手をこするような典型的な動きをすることも特徴です。

ASDについては別途記事を擁していますので、参考にしてください。

注意欠陥多動性障害

注意欠陥多動性障害(ADHD)は、不注意と多動・衝動性の症状を主な特徴とする発達障害の概念です。

AD・HD

Attention(注意) Deficit(不足、欠乏)・Hyperactivity (活動過多)Disorder(障害)

どちらかの特性が強く出る場合と、両方同じように持ち合わせている混合型があります。7歳くらいまでに症状が現れることが多いです。

不注意優勢型

このタイプは、日中の眠気が強いことも特徴です。

  • なくしもの、忘れ物が多い
  • 集中できない
  • 同じ過ちを繰り返す
  • 詰めが甘い
  • 整理整頓が苦手

多動・衝動性優勢型

このタイプはアグレッシブで攻撃的な印象です。

  • じっとしていられない
  • 待つことができない
  • イライラしやすい
  • 決まり事を守れない

ADHDについては別途記事を用意していますので、参考にしてください。

学習障害

学習障害は、知的能力や理解能力には異常がないのに、読み書きなどの学習が難しくなる障害のグループです。

LD

Learning(学習)Disability(障害)

発達障害に分類される人の中には、逆に驚異的な能力を持っているケースもあります。

読字障害

ひらがな・カタカナ・漢字の習得が著しく困難な障害です。

ディスレクシア

dyslexia ギリシャ語で「読むのが困難」

  • ひらがな一つ一つは読めるが、単語になると読めない
  • 声に出すとリズムが悪く、すらすらと読めない
  • ちゃちゅちょなどの理解ができない
  • 読んでいるカ所がわからなくなる

読字障害は、ただ勉強が不足していることと区別するためにこのような定義があります。

知的な遅れや視聴覚障害がなく充分な教育歴と本人の努力がみられるにもかかわらず、知的能力から期待される読字能力を獲得することに困難がある状態

e-ヘルスネットより引用

多くは学力低下で発見され、幼少期は本人に自覚がなく障害であることに指摘されて気が付くことがあります。

2012年に小中学校教師を対象とした全国調査の結果、学習面に著しい困難を示す児童生徒は4.5%存在するとの結果が出ています。

書字障害

文字は読めるけれど、書くことが困難な障害です。

ディスグラフィア

dysgraphiaギリシャ語で「書くのが困難」

自分では書いているつもりだけれど、書けていないのが特徴です。

  • 鏡文字や雰囲気で適当な文字を書く
  • 誤字脱字や書き順の間違いが多い
  • 黒板やプリントの字が書き写せない
  • 漢字が覚えられない
  • 字の大きさがバラバラ、列が乱れる

算数障害

数字の概念の理解や論理的思考が著しく困難な障害です。

ディスカルキュリア

dyscalculia ギリシャ語で「計算が困難」

  • 数字、記号が理解しにくい
  • 筆算の列が乱れる
  • 数の大きい、小さいが分からない
  • 図形やグラフが苦手、理解できない

学習障害について別途記事がございます。参考にしてください。

書きり(ディスグラフィア)

その他の発達障害

3つの分類に当てはまらない発達障害についてもご説明します。

トゥレット症候群

1885年にフランスの神経科医ジル・ド・ラ・トゥレットによって報告されたし症状です。

TS

Tourette’s (トゥレット医師)Syndrome(症候群)

多種類の運動チックと1つ以上の音声チックが1年以上にわたり続く重症なチック障害で、6歳くらいから始まり徐々にチックが重症化していきます。

多種類の運動チックと1つ以上の音声チックが1年以上にわたり続く重症なチック障害で、6歳くらいから始まり徐々にチックが重症化していきます。注意欠陥多動性障害と併発する場合もあるそうです。

運動チック

同じ動作を繰り返し行うことが特徴です。

運動チック複雑運動チック
瞬き体をそらす
首振り手叩き
顔をしかめるジャンプ
肩をすぼめる屈伸

音声チック

音声チック複雑音声チック
鼻をすする無意味な発言
咳払いオウム返し
ン、ンなどの発声場にそぐわない汚い言葉

複雑運動チックや複雑音声チックが1年以上続くものをトゥレット症候群(TS)といいます。

吃音

吃音とは、一般的には「どもる」ともいわれる発語の障害で、幼児期から学童期に発症し、言葉は十分理解しているけれど、口に出して話すことが困難な状態です。

略語なし

Stuttering(どもる)

  •  練声型(「あ、あ、あ、ありがとう」)
  •  伸発型(「あーーーりがとう」)
  •  無声型(「・・・・っあっ・・」)

その他の症状として小声になる、赤面する、体をこするとなどの随伴症状を併発する可能性があります。

多くは成人までに症状が軽くなったり、消失しますが、まれに成人後もなんらかの症状が残る人も見受けられるそうです。

発達性協調運動障害

発達性協調性運動障害は、体にまひなどはないけれど人並外れた不器用さや運動の不得意さのために日常生活に支障が出る障害です。

DOD

Developmental(発達上の)coordination(筋肉の動きの協調)disorder(障害)

  • 何もないところでよく転ぶ
  • スポーツ全般ができない
  • ボタンが留められない
  • 字がうまく書けない

特徴は幼少時から親が気が付くことが多く、本人も周囲と同じようにできないことで劣等感を覚えやすいことです。いじめの原因にもなり、うつや不登校の原因にもなります。

知的障害(精神遅滞)

知的障害はさまざまな要因で起こる知的能力の著しい低下で、発達障害にも合併する障害の一つです。

IR/MR

 Intellectual(知的の) Disability(障害)/ Mental(精神の)Retardation(遅滞)

知的障害(ID: Intellectual Disability)は、医学領域の精神遅滞(MR: Mental Retardation)と同じものを指し、「知的発達の障害」を表します。すなわち「1. 全般的な知的機能が同年齢の子どもと比べて明らかに遅滞し」「2. 適応機能の明らかな制限が」「3. 18歳未満に生じる」と定義されるものです。中枢神経系の機能に影響を与える様々な病態で生じうるので「疾患群」とも言えます。

厚生労働省「知的障害(発達遅延)」より引用

知的障害の有症率は全人口の1%で、重症度により軽度、中等度、重度、最重度へ分類されます。

知的障害にあてはまるかどうかは、知能テストによるIQ(Intelligence Quotient知能指数)の測定で決定し、おおよそ70以下の場合に知的障害と判断がくだされるようです。

しかし知的障害の重篤さはIQばかりでなく、日常生活を送るのに必要な対処能力(適応能力)も合わせて総合的に判断しなければなりません。

間違いやすい用語

使用方法に誤解が生じている用語やあいまいな用語もあります。

グレーゾーン

発達障害の特性が見られるものの、診断基準を満たしていないため判断がつかない状態をグレーゾーンといいます。正式な診断名ではない点に注意してください。

発達障害を抱える方と同様、生きづらさを改善するために医師などと連携して環境改善や対処療法へ進みます。

軽度発達障害

以前はよく使用されていた名称です。発達障害に関連する名称は、医学の進歩とともに変化を続けています。

その中で、以前は知的障害を伴わないグループを軽度発達障害と呼んでいたことがありました。しかし、知的障害の有無で発達障害の重篤さを判断するような誤解を招きやすく、現在はこの名称は使用されていません

平成19年に文部科学省から「軽度発達障害」という文言を使用しないという内容の通達が出されました。

参照:文部科学省「発達障害」の用語の使用について

境界知能

知能検査の結果、IQ70未満を知的障害と判断し、70~84に該当する場合は境界知能と判断します。知的障害に該当する方よりも困難さは抱えていないものの、生活を送るにあたり生きづらさを感じるようです。

NHKの調べによると、取材した2021年の時点で人口の約14%に当たる方が境界知能に該当し、身近な問題となっています。

参照:なぜ何もかもうまくいかない? わたしは「境界知能」でした

まとめ

今回は発達障害に関連する略語について解説しました。少し整理するお手伝いができましたでしょうか。

略語や用語などを知ることで、発達障害のことが理解しやすくなったり、だれかに具体的に相談できるようになったりします。

困りごとが楽になるために、この情報が少しでもお役に立てることを願っています。