こんにちは!今回も知っておきたい発達障害に関するノウハウや情報を提供させていただきます。本日は「発達障害を抱える子どもの育て方」についてです。
発達障害の我が子をどのように育てていけばいいのか悩んでいると「天才の可能性を持っているんじゃない」と軽く言ってくる方がいます。ですが現実をみると次のような悩みがあとを絶ちません。
- いうことを聞かない……
- やらなければならないことをしない……
そこで今回は、発達障害を抱える子どもの悩みを解決するために、症状別に育て方のコツを解説します。
目次
発達障害を抱える子どもの育て方
発達障害は大きく3つに分かれており「自閉スペクトラム障害(ASD)」「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」「学習障害(LD)」があり、その他「発達性協調運動障害(DCD)」もあります。
症状別に育て方のコツを解説していきましょう。
自閉スペクトラム障害(ASD)
自閉スペクトラム障害(ASD)の症状例は以下の通りです。
- 人とのコミュニケーションが不得意
- 新しいものに対して苦手意識がある
- 興味範囲が狭い
- 独自ルールにこだわる
- 感覚が敏感
- マルチタスクが苦手
しかしどの症状が強く出るかどうかは人によって異なり、上記症状が強く出ると困難に陥る可能性があります。
そんな自閉スペクトラム障害(ASD)を抱えるお子さんに向いている子育てのコツは「準備を怠らない」です。具体的には以下の特徴を念頭に置くといいでしょう。
- 社交性を身に付けるためにソーシャルトレーニングを受ける
- 予測可能な日常生活を送るため作業をルーティン化する
- お子さんの興味や関心事に合わせた活動を受け入れる
- 感覚に敏感なため苦手な環境を離れ安静な環境を提供する
注意欠陥・多動性障害(ADHD)
注意欠陥・多動性障害(ADHD)の症状例は2パターンに分かれています。
【注意欠陥の症状例】
- 注意力や集中力に欠け特定の物事に向けるのが難しい
- やるべきことがわからず、始めるのに時間がかかる
- 特定のことに興味を持ちにくく困難を生じる
- 物忘れをしたり時間感覚に問題がある
- 予定を立てて維持するのが困難である
注意欠如は成年期においても症状が見られるため、最近では大人になって初めてADHDだと判明するパターンが見られます。
【多動性の症状例】
- 言動や行動が無意識に衝撃的になりやすい
- 落ち着きがなく座っているのが難しい
- 予期しない時に動き出す場合がある
- 活動量が非常に激しい
授業中クラスの中や廊下に出て動き回る生徒の話を聞いた方はいませんか?その子はADHDのうち多動性かもしれません。
以上の症状を持つ注意欠陥・多動性障害(ADHD)のお子さんに向いている子育てのコツは「不安を取り除く」ことです。具体的には以下の特徴があります。
- ルーティンを維持し、時間管理やタスクの集中力を向上させる
- 統一した規則やご褒美を設け、行動を正しく誘導する
- 集中力を維持するため刺激を減らした環境を作る
- 学校や家庭、支援施設などを利用して学習を支援する
学習障害(LD)
学習障害(LD)の特徴は以下の通りです。
- 言語や算数、習字などさまざまな学習領域において問題が見られる
- 理解できないことをどうやって質問すればいいのかわからず混乱してしまう
- 学習における問題が継続するため、通常の指導方法や学習環境では解決できない
- うまくいかず自己肯定感が低くなり学習や社会生活にストレスを感じやすい
そんな学習障害(LD)のお子さんに向いている子育てのコツは「自分に合った学習方法を見つける」でしょう。具体的には以下の方法があります。
- 写真やイラストなどを使い、理解を補助する
- 音声や音楽などを使い、理解を深める
- 要点をまとめたキーワードをカード化し理解しやすくする
- 学習内容を細分化、段階的に学習することで理解度を高める
- 身体を動かす、味覚や嗅覚を使った学習などさまざまな感覚を学習に取り入れる
- 相手の意図を理解するためコミュニケーション能力を向上させる
自分に合った学習方法が見いだせれば自己肯定感を過度に下げることなく成長できます。補助道具の使用には周囲の理解も必要なので、協力を得られるといいですね。
発達性協調運動障害(DCD)
発達性協調運動障害(DCD)の特徴は運動のコントロールについての項目が多いですね。
- 手足の動きが不器用で細かい作業や運動が苦手
- 運動の正確性に欠け、運動の基本パターンを取得するのに時間がかかる
- 運動だけではなく筆記でも同じ失敗を繰り返す
- 特定の運動は苦手だとしても日常生活の通常動作には問題がない
- 複雑な動作を同時に行うと、混乱やストレスを引き起こす
- 上手くいかないと学習困難、集中力の欠如、自己肯定感の低下、不安やうつを引き起こす
生活していく上では大きく問題は見られないとはいえ、必要な動作を求められると症状が出やすいといえます。
発達性協調運動障害(DCD)のお子さんに向いた子育てのコツは「過ごしやすい環境を作ろう」です。具体的には以下の方法を検討してください。
- 個別指導を取り入れ、生徒の能力や特性に合わせ効率よく学習を進める
- バランス感覚やタイミングよくボールを投げるといった協調運動能力を高める
- 動作をイラストや図で表し、理解を深める
- 要点をまとめたキーワードをカード化などして理解しやすくする
- 音声や音楽を使ってリズムやタイミングを身に付ける
- 十分な時間をかけ反復練習することで運動能力を高める
- 運動以外のリラックス方法や休息を十分取り入れる
補助道具や個別指導などをする場合周囲の協力は不可欠ですから、保護者の方は情報提供やサポートに力を入れる必要があります。
発達障害の種類については別途記事を用意しておりますので、興味のある方は併せてご覧ください。
どの子にも向いている育て方はありません。お子さんの症状に合わせた育て方が必要です。
発達障害と天才
アインシュタインやエジソン等、歴史的に偉業を成し遂げた人たちが実は発達障害だった!という話は有名ですよね。
否定論もありますが幼少期のエピソードから、現代でいう発達障害のような特性をもった人物だったことは読み取れるようです。
冒頭でもお話ししましたが、そんな事実から「発達障害なら何か天才の要素があるかも!」と周りの人から声をかけられる人もいるのではないでしょうか。
しかし発達障害に実際に関わる方がみな声をそろえていうのは、「確かに天才の中に発達障害の人がいるのは事実。しかし発達障害の人すべてが天才ではない。」です。
この凸の部分が飛び抜けており、それに加えて発達障害の特性であるこだわりの強さと並外れた好きなことに対する集中力が重なることで、天才と呼ばれる人たちも出てくるのでしょう。
ただ誰でもがそうなるとは限りません。もっといえば発達障害のあるなしにかかわらず、誰でもがそうなる可能性を秘めています。
それほどまでに、個性を伸ばす関わり方というのは重要になってくるのです。
個性を伸ばす育て方
それでは個性を伸ばす育て方のコツを見ていきます。
個性を伸ばす方法
個性を伸ばす方法は次の2つです。
個性を見つける
まずは普段生活している中で親御さんが感じる我が子の「良いところ」「他人と違うところ」「好きなこと」「いつも集中して取り組んでいること」等を見つけていきましょう。
周囲の大人が子どもの特徴や個性を正しく理解することが、個性を伸ばす第一歩です。
環境を整える
その次に整えるのは「環境」です。学校や習い事はお子さんの個性に合っているでしょうか。
集団生活が苦手な子に30人1クラスの環境は苦しいものです。そしてお子さんは好きなことを好きなだけできているでしょうか。
そういった大枠の環境設定から本人の時間の使い方の部分まで、自由にのびのびと過ごせる環境づくりが重要といえます。
自己肯定感を上げていく
そして「自己肯定感」を育てるような声かけやフォローアップも大切です。
具体的ポイントは次のようです。
- その子のありのままを受け入れて、「あなたはすばらしい子だよ」と常時声をかけていく。
- 好きなことや集中して取り組んでいることに没頭できる環境をつくっていく。
- やりたくないことや苦手なことは強制しない。
実際例
では実際に発達障害のお子さんを育ててこられた方々、また本人の言葉、というのもあるのでご紹介しますね。
立石美津子さん
自閉症児(16歳)を子育て中の自身のエピソードや、発達障害児を持つさまざまな親の話を交えながら、子どもがのびのび育つための子育てのポイントを紹介した本を出されています。
とはいえ、他人を恨んだり健常児をうらやんだりしていても、子どもの状態が変わるわけではありませんでした。
私自身が変わり、子どもの障害を受け容れ、時が経ち、今、息子は16歳になりました。障害児ママ仲間のなかには「今度、妊娠できたら普通の子がいい」と言う人もいます。
でも、私は違います。嘘偽りなく「もし、もう一度妊娠することができても、この子がいいな」とまで思えるようになりました。正直、今もしんどい子育て中です。成人しても親が面倒をみなくてはなりません。親亡きあとのことも心配です。でも、この子がいるから毎日ご飯を作って家事をして仕事もがんばれます。
引用:立石美津子オフィシャルサイト
さまざまな葛藤を繰り返しながら、「ありのままを受け入れる」ことの大切さを学んでいった立石さん。
こちらの書籍では、障害受容、療育選び、カミングアウト、学校選びなど、子どもの将来を左右する大切な“分岐点”で親としてぶつかる様々な悩みと解決法も紹介されています。
ブロガーのなないおさん
発達障害のある2人の子どもを育てるシングルマザーでブロガーのなないおさん。朝日新聞 EduA にて、その子育てが紹介されていました。
特別な天才ではないかもしれない。その前提で子どもたちに得意なことや好きなことを見つけることに注力してきました。発達障害があることで人よりもできないことや困ることがどうしても多くなってきます。その中で生きる気力を持ち続けるために、好きなことや得意なことが力になってくれるかもしれないと考えました。
引用:朝日新聞 EduA
こういった考え方から、お子さんの好きなことや得意なことを伸ばさせる関わり方をしていらっしゃいます。
参考元:うちの子流~発達障害と生きる
東田直樹君
重度の自閉症であり会話もできない直樹君ですが、発達期に「文字を通して自分の気持ちを伝える」という手段を身につけました。
自分の気持ちを伝える手段とはパソコンと同じ配列でアルファベットと数字を書いた「文字盤」を使った会話です。そしてお母さんとは「指筆談」での会話もできます。
「文字盤」と「指筆談」はどちらもお母さんが考案したコミュニケーション方法なのだとか。
そして自分の気持ちを文字で伝えられるようになった彼は、13歳の時に執筆した『自閉症の僕が跳びはねる理由』で理解されにくかった自閉症の内面を平易な言葉で伝え、注目を浴びます。
そしてその後もたくさんの著書を出しています。著書を紹介している動画がありますので参考にしてください。
しかしながら彼は重度の自閉症。体のコントロールが効かずに、奇声を上げたり飛び跳ねたりの行動は抑えられません。その他の自閉症特有の症状が治っているわけでもありません。
発達の凸の部分も突き出ていますが「凹の部分も突き出ている」といえばわかりやすいでしょう。自閉症という障害を抱える本人が「自らの内面を表現できる」のは、世界的にも珍しいケースだと思います。
そして彼が上記のように表現できるようになった土台となっているのは、やはり発達期のお母さんや家族の関わり方が大きいといえるでしょう。
「本人を理解し、必死でコミュニケーションをとれる方法を探し、つくり出していった。」「本人のペースを見守り、環境を整えていった。」お母さんがやられてきたことはそういったことでした。
すごく極端な例かもしれませんが、いろいろな気づきをいただけますよね。
参考元:東田直樹オフィシャルサイト
参考書籍:「自閉症の僕が跳びはねる理由―会話のできない中学生がつづる内なる心」
まとめ
発達障害に限りませんが子どもたちが持っている「のびしろ」はすごく大きいものです。
発達障害を抱えている場合は特にできない部分が目立って、それをどうにかしようという方向に意識を持っていかれてしまいます。
しかしありのままを受け入れ本人の「好き」をとことんできる環境を作り、「できない」という苦しみに寄り添えたら、発達障害を抱える子どもは救われていくのかもしれません。