こんにちは!こんばんは!今回も知っておきたい発達障害に関するノウハウや情報を提供させていただきます!本日は「発達障害 愛着障害」についてです。
対人トラブルの原因ともなりやすい「愛着障害」は、一部の症状が似ていることから「発達障害」と誤解されてしまうことも。
あまりにも似ているので「愛着障害って発達障害の症状の一部じゃないの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
実は発達障害と愛着障害は全く別の疾患なんです。それぞれ原因も対処方法も異なるので、混同したままではより悪化してしまうおそれもあります。
しかし、無関係であるかと言えばそう言い切れない要素もあり、今回は2つの疾患の違いや混同しやすい理由、子供への支援について紹介したいと思います。この記事で一緒に学んでいきましょう!
目次
愛着障害とは
「愛着障害」と聞くと何となく人を信じることが出来ない、何かに対して執着心がわかないようなイメージがあると思いますが、愛着障害とはどのような障害なのでしょう。
愛着障害はアタッチメント障害とも言われており、幼少期に子どもと養育者の何らかの理由により両者の間に愛着が芽生えず子どもの情緒や対人関係に問題が生じてしまうことです。
基本となる愛着形成は生後半年から1歳半の間にピークとなります。
この間に自分は親に「望まれていない」と感じた子どもは「自分は誰からも望まれない人間」だと信じ、親に愛されたと感じた子どもは「すべての人から愛される」と信じて成長します。
参考サイト ブリーフセラピー・カウンセリング・センター
愛着障害の原因
愛着障害の原因は、子どもと養育者との間に愛着がうまく形作られないことが大きく関係しています。具体的には、以下のような原因が挙げられます。
・養育者との死別・離別などで愛着対象がいなくなってしまう
・養育者から虐待やネグレクトを受けるなど、不適切な養育環境で育てられた
・養育者が子どもに対して最低限の世話はするものの、無関心であったり放任したりしていた
・養育者のような立場の大人が複数いて、世話を焼いてくれる人が頻繁に変わってしまっていた
・兄弟差別など、他の子どもと明らかに差別されて育てられた
このように、本来愛着を形成する対象に危害を加えられたり、それによって自分が育った環境が安全でなかったりすると愛着の形成が阻害されてしまいます。
引用元 マドレクリニック 心療内科 精神科
このように、愛着形成の原因として考えられているのは子どもの養育環境が主なものとして考えられており、治療としてはカウンセリング療法や心理療法、家族療法などがあります。
愛着障害の診断
愛着障害の診断は5歳までに行われ、診断基準はWHO の国際疾病分類10版に定められており、愛着障害は医学的に「反応性愛着障害」と「脱抑制型対人交流愛着障害」の2種類に分類されます。
「反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)」
5歳までに発症し、小児の対人関係のパターンが持続的に異常を示すことが特徴であり、その異常は、情動障害を伴い、周囲の変化に反応したものです(例:恐れや過度の警戒、同年代の子どもとの対人交流の乏しさ、自分自身や他人への攻撃性、みじめさ、ある例では成長不全)。この症候群は、両親によるひどい無視、虐待、または深刻な養育過誤の直接的な結果として起こるとみなされています。
「脱抑制型愛着障害」
5歳までに発症し、周囲の環境が著しく変化しても持続する傾向を示す、異常な社会的機能の特殊なパターンです。たとえば、誰にでも無差別に愛着行動を示したり、注意を引こうとして見境なく親しげな振舞いをするが、仲間と協調した対人交流は乏しく、環境によっては情動障害や行動障害を伴ったりします。
この二つは症状には大きな違いがみられますが、どちらも幼少期に愛着形成が出来なかったために他者との適切な距離感が分からず出現する症状です。
愛着障害の症状
愛着障害の症状として、
- 他人とのコミュニケーションをとることが苦手
- 特定の人と親密な人間関係が築けない
- 衝動的、反抗的・破壊的な行動
などがあります。
先ほど医学的には2つの種類があるとご紹介しましたが、具体的にはどのような症状なのか見ていきましょう。
反応性愛着形成障害
【反応性愛着形成障害】では人との関わりにおいて適切な形で関係が築けず、人のアクションにも反応できず、過剰に警戒心を持ち、誰とも親しい関係になれない傾向があります。
表情が乏しく笑顔がなかったり、他の子との交流がない、などの症状がみられます。
脱抑制型対人交流障害
【反応性愛着形成障害】に対して、【脱抑制型対人交流障害】では他者との適切な距離感が理解できず、警戒心なく広範囲な人間関係を形成しようとして知らない人に話しかけたり、馴れ馴れしく過剰にベタベタしたりする傾向にあります。
初対面でもベタベタ触れたり、抱っこやおんぶをせがんでしまうことや、馴れ馴れしくその場にそぐわない行動をとってしまうなどの症状がみられます。
一見するとこれらの症状は発達障害の自閉症スペクトラムや注意欠陥障害、多動症などの症状とよく似ています。
参考サイト コトバンク
▼ 「人前で話すことが苦手」な場合は、発達障害・愛着障害とは別に「場面緘黙(緘黙症)」の可能性もあります。こちらも併せて読んでみてくださいね。
「人前で話せない!」緘黙症とはどういう障害?発達障害との関係はあるのか
発達障害と愛着障害の違い
愛着障害の症状は発達障害の自閉症スペクトラムや注意欠陥障害、多動症などの症状ととてもよく似ています。
そのため発達障害と愛着障害の症状を見分けることは難しく、医療機関でも誤診しないように慎重に診断を行っているほどです。
ではここから、2つの障害が症状は似ているのに違うものとして扱われているのはなぜなのか、理由を紹介していきますね。
【理由】原因の違い
愛着障害は先述した通り、子どもの養育環境により愛着形成が出来なかったことが原因となります。一方、発達障害では先天的な脳の一部の障害が原因となります。
発達障害
先天的な脳の障害で生じる発達障害の症状や特徴に対して、基本的に治療することは出来ません。
愛着障害
しかし愛着障害は、養育環境や養育者の関わり方が原因であり、養育者の子どもへの関わり方を変えたりカウンセリングや心理療法などの治療を行うことで障害の軽減が図れます。また、治療により障害を完治させることも可能です。
医学的には別の疾患である
このように同じような症状であったとしても、原因や治療方法などに違いがあり、発症のメカニズムとしても違うため医学的には別の疾患として捉えられています。
「発達障害かも?」「愛着障害かも?」と感じたら、まずは専門の医療機関への受診を検討してみて下さい。それぞれの障害は症状が良く似ていますが、原因も違えば、対処法も違います。誤った対処法を取ってしまうことで、より問題が悪化してしまう恐れもあるのです。
専門家の目から、どちらの障害が問題に繋がっているのか見極める必要があるというわけです。
発達障害と愛着障害の関係性
先ほど発達障害と愛着障害は別の疾患であるとご紹介しましたが、無関係とは言い切ることは出来ません。
「発達障害」と「愛着障害」を併発してしまうケースもある
先ほどもお伝えしたとおり、発達障害は先天性・愛着障害は関わる人との関係性でおこる後天的な障害だからです。
そのため、発達障害の子どもがその後の人との関わりによって、後天的な愛着障害を併せ持つというケースもありえます。
発達障害を持つ子どもの育児はとても大変です。発達障害を持っていない子どもの育児でも大変なのに、発達障害を持つ子どもの育児は大変なのはもちろんですが、悩みや焦り、不安などがどうしても付きまとうものです。
ルールを理解出来ない、話を聞けない、こだわりが強く融通が利かない、自傷行為を繰り返すなど発達障害を持つ子どもの親は本当に苦労したり困っていることがたくさんあります。
そんな中、親が子どもに対し虐待やネグレクトなどを行ってしまうことで、発達障害とともに愛着障害を発症させてしまうケースがあります。
▼ お子さんを育てるのがしんどい…と感じたら、こちらも読んでみてください。相談先やお助けグッズも紹介しています。
発達障害のある子供の育児は大変?育てにくいと言われるのには理由があった!
発達障害と愛着障害を見分けるポイント
見分けるポイントは4つです。
- 多動
- 片付け・ルールを守るのが苦手
- 取り上げない・無視した場合の反応
- 集団、2人きりなど、対人による違い
それぞれ説明していきます。
多動
多動とは落ち着きなく動き回ることです。多動はADHD(不注意・多動性・衝動性)や自閉スペクトラム症(ASD)などの発達障害、また、愛着障害(AD)にも見られます。
しかし、同じ多動でも症状によって起きる原因が異なり、それが見分け方につながります。次の通りです。
- ADHD(発達障害)→気づくという認知とは無関係に多動になる
- 自閉スペクトラム症(発達障害)→急に物事の変更に対応できず多動になる
- 愛着障害→感情による影響が大きく、すごくネガティブなとき、興奮状態のときに多動になりやすい
片付け・ルールを守るのが苦手
片付け・ルールを守るのが苦手な現象は、ADHD・愛着障害それぞれに見られます。これもそれぞれによって原因が異なります。
- ADHD(発達障害)→物事の実行機能、衝動性や行動制御に問題があるため、最後まで片付けるという行動ができない・ルールが守れない
- 愛着障害→片付けると気持ちいい、ルールを守ることによるポジティブな感情が育っていないため、意欲がわかない
取り上げない・無視した場合の反応
子どもが何かでふさわしくない行動をしたときに、取り上げない・無視するなどした場合、ADHD・愛着障害それぞれで反応が異なります。
- ADHD(発達障害)→子どものふさわしくない行動に対し、取り上げない・無視するなど、何もしないことで、その行動をしなくなっていく
- 愛着障害→何も対応しないと、よりふさわしくない行動が増える傾向がある(自分の感情をわかってほしい・もっと自分を見てほしいなどの感情)
集団、2人きりなど、対人による違い
対人の状況によっても、ADHDと愛着障害の特徴が変わってきます。
- ADHD(発達障害)→対人状況の違いで、その都度特徴が変わることはない
- 愛着障害→集団状況のほうが特徴が現れやすくなり(特定の人との関係が意識しにくい)、先生と1対1など特定の人の状況では現れにくい(関係が意識しやすい)
発達障害と愛着障害の子供への支援・できること
二つの障害の支援について紹介していきたいと思います。
発達障害も愛着障害も一人一人症状や程度が違うため、その子に合わせた対応が必要になります。そのためにも、子どもをよく観察し言動の一つ一つを理解するように努める必要があります。
① 愛着障害の子どもへの支援
愛着障害は先天的なものではなく、治療法としてカウンセリングや心理療法、家族療法などがあります。
治療法はありますが、幼少期から積み重ねているはずのものを再び構築させようとしていることとなるため、とても時間がかかる治療となります。
できることは「愛情の拠り所を完成させる」こと
養育者として出来る関わりとして、未完成の愛情の拠り所を完成させることです。子供にとって安全、安心な居場所であり、離れていても認めてくれる人になりましょう。
つまり子どもにとって危険なことや不安なことから守ってくれて、そばにいるとホッとできたり前向きな気持ちにさせてくれて、どこにいても見守ってくれている存在です。
しかし、愛着障害の子どもにそのように思ってもらえるようになるのはとても大変です。まずは子どもを抱きしめてそばに居てあげることから始めましょう。
愛着障害の考え方の特徴や克服方法についての動画がありますので、参考にしてみてください。
参考サイト ぎゅっと抱きしめられたい子ども
② 発達障害への子どもの支援
発達障害は脳の機能の一部の障害です。
その子の症状はその子の特徴として捉えましょう。特徴は治療を行っても治すことは出来ないため、特徴による問題行動に対して対策や工夫を行いましょう。
工夫の例
例えば、人が嫌がることが分からない特徴の子どもであれば、
- 人が嫌がる行動をとらないようにするために、「いや」と言われたらすぐにやめる
- 「いや」と言われた時には、すぐにやめることが出来るように練習
- 周囲に嫌なことをしてしまったら「いやだ」と教えてほしい、と伝える
などの工夫や、生活しやすいように周囲の環境を整えてあげましょう。
発達障害には早期の「療育」で効果が期待できます
「療育」とは、障害を持つ子供たちをサポートし、社会生活を送りやすくする訓練などを行う活動です。早期に療育を始めることで、より効果が期待できるといわれています。
お近くの「放課後等デイサービス」などで療育を受けることができますので、検討してみて下さい。
▼ 神奈川県横浜市の「ライズ児童デイサービス」では、たくさんの療育プログラムをご用意しています!お気軽にご相談下さい!
できること③ 困った時・ツライ時の相談先
発達障害も愛着障害も、改善には長い時間と取り組みが欠かせません。すぐには効果が出ないこともあるでしょう。
もし「ツライ」「しんどい」と感じることがあれば、無理をせずに周囲への相談も試してみて下さい。
たとえば公共の相談窓口もあります。
- 住んでいる地域の保健センター
- 住んでいる地域の子育て相談窓口・障害福祉祉課
- 児童相談所 など
ご家庭だけで抱え込まなくてもいいんです。相談には勇気がいると思いますが、第三者に話を聞いてもらうだけでも気持ちが楽になったり、新たなアイディアが見つかったりするかもしれません。
まとめ
発達障害と愛着障害は別の疾患ではありますが、無関係ではなく2つの疾患が複雑に関係しあっている可能性があります。
2つの障害の見極めは専門家でも慎重に行われます。誤った対処法を取ってしまうことで悪化する恐れもありますので、専門の医療機関を受診して、まずはどちらのケースが問題に繋がっているかを知るところから始めましょう。
発達障害や愛着障害の子どもの理解できない言動にイライラする時があるかもしれませんが、その子を理解しようと考え、関わり方を手探りで見つけていくしかありません。
どちらの障害でも、すぐにわかる変化は期待せずにその子にしっかり向き合い関わっていく必要があります。もし「ツライ」「しんどい」と思うことがあれば、ご家庭だけで抱え込まずに公共の相談窓口などへのご相談も検討してみて下さいね。